食品メーカーの商品開発が加速、ラインアップの多様化が進むプラントベースフード
21年秋から一般家庭向けに、動物性原材料は配合せず、植物素材を使った商品の販売をスタートしたカゴメでは、昨年秋に植物素材を使ったプラントベースのタイカレー「野菜と豆のマッサマンカレー」を発売。カシューナッツの風味をにんじんの甘味や独自のスパイス配合で引き立てることで、動物性原材料不使用でも満足できる濃厚なコクや甘味がある商品だ。
神明では、お米由来のたんぱく質を使用した植物性のチーズ代替品「お米でとろ~りとろけるシュレッドタイプ」を発売。お米に6%程度しか含まれないライスプロテインを使用し、長年おもちスイーツを開発・販売してきた技術をもとに、チーズの旨味を再現した。
マーガリン、チーズ、ホットケーキを主力とする食品メーカーのマリンフードでは、植物性原料を使用したチーズ代替品「スティリーノ」を配合した定番商品のベビーチーズタイプ5種を発売。これは100%プラントベースではなく、ナチュラルチーズに「スティリーノ」を混ぜ合わせたハイブリッドだ。
日清シスコが“気軽に毎日続けられるプラントベース朝食”をコンセプトに開発したのが、「ごろグラ Plant Based 3種のナッツとオーツ麦」。パッケージには、環境にやさしい紙包材とバイオマスインキを使用しているほか、途上国の子供たちに学校給食を支援する国連WFPの「レッドカップキャンペーン」に参加するなど、地球環境や社会にも配慮している商品だ。
海外では植物性素材そのもののよさに注目が
ネットリサーチの日本トレンドリサーチ(運営会社:NEXER)では、全国の男女計900名を対象に「プラントベースフードに関するアンケート」(調査期間2022年3月16日~3月24日)を実施している。そのなかで、プラントベースフードを知っていた人(207名)に対し「これまでに食べたことがある『プラントベースフード』」(複数回答)を聞いたところ、「大豆ミート」やオーツミルク、アーモンドミルク、豆乳などの「植物性ミルク」といったよく知られたもののほかに、「豆腐・おからを使ったウナギ」、「こんにゃくで作ったマグロ」、「米粉を使ったチーズ」、「豆乳ベースの卵」なども一定数の回答があったという。
この結果は、プラントベースフードを知っていた人の中だけの回答であり、世間一般の認識とは乖離があるだろう。しかし、今後、より多くの人にプラントベースフードが認知されれば、市場としての可能性を感じられるようになるはずだ。
一方で今、海外では、代替肉市場に大きな変化が現れ始めているという。
食品業界に特化したトレンドリサーチの世界的リーディングカンパニーINNOVA MARKET INSIGHTS(オランダ)で日本カントリーマネージャーを務める田中良介氏は、プラントベースの先進国であるオーストラリアで、代替肉原料としてシイタケが使われているごく一般的なプラントベースフードを食べたところ、食感は肉に近いものの味は完全にシイタケだったという。
その実体験からも「今や“がんばって肉を模した代替肉”だけがプラントベースフードとして求められているのではない。それよりもむしろ植物性素材そのものの魅力や味わいを生かした製品が求められるようになってきた」と語っている。
いずれ日本でも、プラントベースフードは、代替品という何かの代わりを意味するものではなくなり、からだにも、地球にもやさしい、心地よい食べ物として広がりを見せていくにちがいない。