ロングセラーブランド成功の秘訣、キーワードは「ユーザーの囲い込み」

小林 すず子(株式会社ライフスケープマーケティング)
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多くの生活者に受け入れられ、飽きられることなく売れ続ければ、その商品はやがてロングセラーとなる。単純だが、成し遂げるハードルは極めて高い。今、棚に並んでいるロングセラーブランドはどのようにこの難題を乗り越え、生き残り続けることができたのか。人々の消費の場である「食卓」という視点から分析した。

食MAP®のロゴ

食MAP®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが提供するマーケティング情報システム。1988年10月から首都圏30km圏内在住の主婦世帯を対象に、食品の購買、調理、消費までをパネル形式で調査したもの。※食MAP®データにつきまして無断転載は禁止とさせていただきます。
株式会社ライフスケープマーケティング TEL:03-3515-7088 https://www.lifescape-m.co.jp/

ロングセラーブランドに共通する戦略

 1つのブランドがロングセラーとなるには、時代を超え、多くの人々に愛され続けなければならない。すなわち、そのブランドに対する生活者からの信頼を獲得し、購入され続けることが必要である。しかし、社会環境の変化に伴い、人々の意識、そして食卓の変化も著しい昨今、ロングセラーブランドの地位を維持することは容易なことではない。

 なぜこれらのブランドは厳しい変化の最中においてその地位を確立し、守り続けることができたのだろうか。「食卓」という視点から見たとき、そこには「ブランドユーザーの囲い込み」という共通のキーワードがあることが見えてきた。

 明治「ブルガリアヨーグルト」

 「ブルガリアヨーグルト」は1973年に誕生したブランドだ。現在、プレーンのほか脂肪0、甘みつき、カルシウムと鉄分など400gタイプだけでも豊富な種類がある。

 【図1】では分析期間中「ブルガリアヨーグルトLB81プレーン 400g」の喫食経験があるモニタ(以下、ブルガリアヨーグルトユーザー)と、プレーンヨーグルトの喫食経験はあるが、当該商品の喫食経験はないモニタ(以下、非ブルガリアヨーグルトユーザー)とで、その他の「ブルガリアヨーグルト」ブランドのTI 値を比較した。これを見ると、ブルガリアヨーグルトユーザーは、当該商品以外のヨーグルトも同じ「ブルガリアヨーグルト」ブランドから選ぶ傾向があることがわかる。

【図1】 ブルガリアヨーグルトユーザー・非ユーザー別 その他「ブルガリアヨーグルト」ブランド商品TI値

 ある商品をどんなに高頻度で購入するユーザーでも、内に抱えるニーズに変化があれば、別の商品に手を伸ばす、さらにはすっかり乗り換えてしまうことはあるだろう。「ブルガリアヨーグルト」ブランドはそのニーズの変化や幅広さをカバーする商品を同ブランド内に展開している。

 このことが、ユーザーがヨーグルトに求めることに変化があっても、他ブランドではなく、いつもの「ブルガリアヨーグルト」を選ぶことに繋がっている。結果として大切なユーザーをみすみす手離すことなく、ブランド内で囲い込むことに成功しているのである。

 【図2】は「ブルガリアヨーグルト」ブランド全体のジェネレーション分析の結果である。食MAPのジェネレーション分析は、生活者の食意識や食行動データから、世代間の食の違いや特徴を明らかにする。これにより次世代の食を把握し、アプローチの糸口を探る手法である。

【図2】「ブルガリアヨーグルト」ブランド ジェネレーション分析

 「ブルガリアヨーグルト」の分析結果を見てみると、特にBB世代からの支持が根強く、出現も年々伸びていることがわかる。その他の世代についても出現は伸長傾向、あるいは横ばいで推移しており、「ブルガリアヨーグルト」のブランドは世代を問わず幅広い層のユーザーを獲得し続けているといえる。

日清製粉ウェルナ「マ・マー」

 1955年発売の「マ・マー」ブランドは、今年誕生から70周年を迎える。現在、同ブランド内にはパスタ、マカロニのほかパスタソースや調理用ソースなど、さまざまなカテゴリの商品が展開されている。

 【図3】は分析期間中「マ・マー チャック付結束スパゲティ 1.6mm 600g」の喫食経験があるモニタ(以下、マ・マーユーザー)と乾燥スパゲティの喫食経験はあるが、当該商品の喫食経験はないモニタ(以下、非マ・マーユーザー)それぞれの「マ・マー」ブランドのTI値である。

【図3】マ・マーユーザー・非ユーザー別 その他「マ・マー」ブランド商品TI値

 マ・マーユーザーは非マ・マーユーザーと比較して当該商品以外でも「マ・マー」の商品を選ぶ傾向がある。「ブルガリアヨーグルト」と同じく、「マ・マー」もユーザーを1つのブランド内で囲い込むことに成功しているといえる。

 次に「マ・マー」ブランドについても、ジェネレーション分析を行った【図4】。この結果より、「マ・マー」ブランドはどの世代の食卓にも出現していることがわかる。

【図4】「マ・マー」ブランド ジェネレーション分析

 α世代のTI値を見ると、2017年には他世代と同程度まで伸びていることから、小さな子供でも年齢とともに食べられる食品が増え、徐々に「マ・マー」を食べるようになっていると見られる。常に次世代のユーザーが生まれていることも「マ・マー」がロングセラーであり続けることに大きく貢献していそうである。

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