1兆円へ、加速するリテールメディア!「価値」最大化に向けた有力小売の戦略とは

文:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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小売が取り組む価値とは

 しかしその成長を実現するうえでは、リテールメディアそのものの価値、とくに日本で主流となっているリアル小売がリテールメディア化を推進することの意義を明確にすることが重要になる。

 まず押さえておきたいのは、リテールメディアはその名称が示すとおり「メディア」であり、「広告媒体」ではないということだ。デジタルサイネージを活用するにしても、コンテンツを流しているだけでは、単なる広告配信デバイスでしかない。

 ある広告代理店の関係者は、「たしかに店頭でデジタルサイネージを見る機会は増えているが、一方的に情報を伝えるだけの『屋外広告』と化しているものも少なくない」と手厳しい。確かにリテールメディアを標榜しながらも、実際には広告受注ビジネスに終始しているケースも散見されるのかもしれない。

 しかしこの広告スキームは事業としての成長性に乏しい。なぜならこうした店頭媒体への出稿は、ほとんどメーカーが流通販促費の予算で賄う傾向にあるためだ。言い換えれば、従来の小売業向け予算の中から一部をリテールメディアに振り分けているにすぎない。もっと核心を突いてしまえば、“お付き合い”の範疇でリテールメディアに出稿しているメーカーも少なくないはずだ。これでは小売業が獲得する“総額”は何ひとつ変わらないことになる。

 こうした状況を打破するためには、自社が推進するリテールメディアの「価値」をいかに高めるかがポイントになる。自社のお客にとって「見る価値」があり、出稿主にとって「出稿する価値」がなければ、リテールメディア事業の拡大は望めない。

 そもそもリテールメディアの役割とは、消費者が最終的に商品を購入する場所(店舗・売場)で、ブランドや商品の価値を効果的に伝えることで購入に直結させることにある。その効果を最大化するためには、売り手都合の一方的な情報発信ではなく、お客が潜在的に求める情報やニーズをとらえ、それに合わせたコンテンツの配信を続けることが重要だ。

 そして、いかにコンテンツをつくり込んだとしても、媒体を所有する小売が主導となって効果検証・分析を繰り返す必要がある。たとえば配信したコンテンツに対し、顧客の行動データや購買データに基づいた検証を行い、出稿主に正確にフィードバックする。配信効果を可視化して共有することも、リテールメディアの価値を高めるうえでは欠かせない。

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雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。

企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。

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