コーナンとの提携にみる楽天のO2O戦略と、コーナンペイの衝撃

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
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3月27日、ホームセンター(HC)大手のコーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)と楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)は提携を発表した。記者会見には疋田社長、三木谷社長とも登壇。両社にそれぞれどのようなねらいがあるのだろうか。

楽天×コーナン提携
3月27日、コーナン商事と楽天は提携を発表。写真は疋田社長と三木谷会長兼社長

コーナンが楽天ポイント導入
HC業界で初めて

 「私は神戸市出身で、小さいころからよくコーナンさんには伺っていました。実は姪がコーナンさんでアルバイトしておりまして、お世話になっています」

 三木谷氏は提携に至った経緯を、プライベートの話も交えながら説明した。提携は、楽天が発行する共通ポイント「楽天ポイント」サービスをコーナン商事の店舗に導入するという内容だ。ホームセンター業界での楽天ポイントの導入はこの提携が初となる。

 もちろん、三木谷氏がプライベートでコーナン商事とかかわりがあるという理由だけで提携が成り立ったわけではない。それぞれの提携の思惑を見ていこう。

 

なんと、「コーナンペイ」を開始!

コーナン商事疋田社長
疋田社長は楽天ポイント導入の決め手は、「圧倒的な会員数、発行ポイント数」であるという

コーナン商事の疋田社長は導入のねらいを次のように語った。

 「当社は今年で40周年を迎えました。『ホームセンターコーナン』とプロ向けの『コーナンプロ』のフォーマットを展開しています。近年は関東圏の店舗展開を注力しており、51店舗あります。業績は売上、純利益とも過去最高となりました。
 現在進行中の中期経営計画では、商品戦略がいちばんの重点ポイントです。また、顧客層の拡大、とくに若年層の取り込みが課題となります。このたび、若年層のユーザーが多く、圧倒的な会員数と発行ポイントを持つ、楽天さんと組むことになりました」(疋田社長)。

 会見では、「なぜTポイントではなく、楽天ポイントなのか」という質問も出た。疋田社長は「社内でたくさん議論をした」と前置きしながら、「圧倒的な会員数、発行ポイント数」を理由に挙げた。楽天は1年間で約2500億円相当のポイントを発行しており、会員数は1億人を超えている。

 また、コーナン商事販売促進部長執行役員の山本健太朗氏は、「ID-POSを活用した顧客分析を販促、商品開発に生かしたい」という。

 「これまで当社ではPOSデータの分析はできましたが、一人ひとりの顧客に紐づいたID-POSの情報を取ることができませんでした。今回、楽天さんに分析の協力も仰ぎ、ID-POSデータから販促、商品開発のヒントを得ていきたいと考えています」(山本氏)。

 コーナン商事は同時に、キャッシュレス化の新たな取り組みも発表した。コーナン商事オリジナルの電子マネーを導入し、カードもしくはスマホアプリから支払うことができる「コーナンペイ」を開始。そのほか、コーナンオンラインショップをリニューアルし、インスタグラムなどのSNSサイトに簡単にシェアできる仕組みを導入した。

 

楽天市場からクーポン
リアル店舗の来店促進へ

楽天三木谷会長兼社長
三木谷社長は「ECだけでなく、リアル店舗の来店促進も応援したい」と説明する

 一方、楽天にとってはHC業界初、かつ、売上高3000億円超の大手企業が仲間となった。

 コーナン限定のカードに、楽天の人気マスコット「お買い物パンダ」のデザインを初めて利用した。「楽天グループとしては、いちばん大事なキャラクター。それだけ大事なパートナーシップだ」と三木谷氏は強調した。

 「コーナンさんには178月から楽天市場にも出店していただいています。日用品、DIY用品だけでなく、リフォーム用品など高額な取引もあります。今回楽天ポイントを導入していただくことでより効果的に利用していただけます」(三木谷氏)。

 また楽天は、この楽天市場とリアル店舗への来店促進を掛け合わせたO2O戦略に力を入れている。楽天の笠原執行役員はO2O戦略の成功例を1つ挙げた。

 「とある楽天市場の出店企業では、画面を見てクリックしている数に対して、そこから商品購入にいたるまで1.8%ほどという結果が出ました。つまり、90%以上の人は画面を見ているだけでした。その人たちに対して、リアル店舗に誘導するクーポンを発行したところ、10数パーセントの人が来店したという実験結果があります」(笠原氏)。

 このO2Oプログラムはあくまでも実験とのこと。「われわれはプラットフォームカンパニー。ECだけでなく、リアル店舗の来店促進のお手伝いもしていきたい」と抱負を語る。コーナン商事側も、「(O2Oプログラムを)いずれ導入してみたいが、まずは様子をみたい」(山本氏)と話した。

 

記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月より現職。

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