「優れた接客が資産」ユナイテッドアローズ藤原義昭CDOに聞く、DX戦略と店舗の役割とは

松岡由希子
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ユナイテッドアローズ(東京都/松崎善則CEO)では、コロナ禍での在宅勤務の普及や外出自粛に伴って、都市部の店舗を中心に客数が減少した。2020年度は、ネット通販の売上高が対前期比11.7%と伸長し、EC比率が32.0%まで増加したものの、店舗の客数の減少によるマイナスの影響を十分に補いきれず、単体ベースの売上高が同21.2%減と落ち込んだ。

だがコロナ禍でEC比率が増加しても、消費者の主たる購買チャネルは依然として店舗だ。執行役員CDO(チーフデジタルオフィサー)・DX推進センター担当本部長 同デジタルマーケティング部 部長の藤原義昭氏は、「これからも店舗はお客さまとの接点であり、お客さまにとってのメディアであり続ける」と店舗の役割を改めて定義したうえで、「これを前提にどのようにデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していくかが課題だ」と指摘する。

DX推進センターによって、社内はどう変わったか

 ユナイテッドアローズは、20214月、DX推進センターを設立。ネット通販の運営、CRM(顧客関係管理)戦略の立案・実行、オウンドメディアやSNSの運用などを担う「デジタルマーケティング部」、社内のIT推進やシステム管理などを担当する「情報システム部」、自社ECのリニューアルを手がける「自社EC開発室」をその下に配置している。商品づくりから販売までの機能を自社で保有する強みを生かしながら、デジタルで顧客との接点を創出し、顧客のニーズや購買行動の変化に素早く対応するのが狙いだ。

 執行役員CDO(チーフデジタルオフィサー)・DX推進センター担当本部長 同デジタルマーケティング部 部長の藤原義昭氏は、「DX推進センターのような横串組織によって、従来の事業部制に基づく縦割り組織の弊害がなくなり、部門間で有機的に連携しやすくなった」とその効果を語る。デジタル化のスピード感が高まるとともに、ビジョンを描いて計画に落とし込み、実行するというDXに向けた一連のプロセスも社内で浸透してきた。

 DX推進センターでは、まず、データ解析や顧客へのインタビューなどを通じ、顧客理解の深化に取り組んだ。

 ある調査では、コロナ禍以前にECを利用したことがない顧客がコロナ禍で来店できず、ECで商品を購入すると、離反するリスクが高まることがわかった。藤原氏は「店舗での豊かな顧客体験がいかに重要であるか、改めて浮き彫りとなった」と分析する。

 また、顧客のLTV(顧客生涯価値)を分析すると、パンツを購入する顧客のLTVが最も高かった。パンツは店舗で試着し、サイズ感や着心地を確認したうえで購入される傾向の強いカテゴリーだ。販売スタッフの丁寧な接客や提案力の高さによって顧客との信頼関係が深まり、継続的な購買につながりやすくなっているとみられる。藤原氏は「優れた接客こそ、ユナイテッドアローズのソフトアセット」とし、「コロナ禍で顧客との接点を持ちづらい状況の中、より多くのお客さまに来店してもらうための仕掛けが必要だ」と語る。

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