コロナ禍で“勝ち組”となるも追い風パタリ? 焼き肉チェーンの現在

棚橋 慶次
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業績は明暗? 大手焼き肉チェーンの動向

 焼き肉の市場拡大をけん引する焼き肉チェーンのうち、本稿では業界の「2強」である「牛角」「焼き肉きんぐ」のほか、かつて最強を誇った「安楽亭」について取り上げてみたい。

 「牛角」を運営するのは、複数の外食業態を展開するコロワイドグループのレインズインターナショナルだ。レインズインターナショナルも牛角のほか多くの飲食店ブランドを展開しているが、牛角の店舗数はここ数年減少傾向にある。だがそれでも2023年4月時点の店舗数は573店舗と2位の「焼き肉きんぐ」を大きく引き離している。

 牛角の価格帯は1皿500~600円台(税抜き、以下同)が多く、食べ放題コースも3180円〜とリーズナブルだ。「低料金焼き肉」の普及に一役も二役も買った、焼き肉価格破壊の火付け役的な存在でもある。コロナ禍でも積極攻勢の手は緩めず、食べ放題専門店(4コースあり価格は店舗により異なる)を次々とオープン。食べ放題というと肉質を気にする人も多いだろうが、消費者の反応はおおむね良好であるようだ。

 5月に発表したコロワイドの新規中期経営計画では、食べ放題専門店と牛角食堂を含む牛角業態を出店強化業態の1つに位置づけ、積極的な出店と直営店舗数の拡大を図っていく方針だ。

 次に見ていきたいのが、物語コーポレーションが運営する「焼き肉きんぐ」だ。「焼き肉きんぐ」が1号店をオープンしたのは2007年と後発だが、短期間で業界2位にのし上がったことを考えるとその凄みがわかるだろう。

 2023年3月末時点の「焼き肉きんぐ」の店舗数は299店舗と牛角の半分程度(うち直営185店舗)であるものの、その成長ぶりは目をみはるものがある。価格や味付け、店舗への入りやすさや親近感はもちろん、素材へのこだわりも焼き肉きんぐの魅力だ。味の好みの地域性を考えた限定メニューや食べ放題での新食材の提案など企画力にも優れており、存在感を大きくしている。

 一方で、苦境にあえでいるのが、老舗焼き肉チェーンの安楽亭だ。創業半世紀以上の歴史を誇る同社だが、ここ数年は不採算店の撤退が続き業績はさえない。かつては低料金焼き肉チェーンの雄として業界内で存在感があったものの頭打ち感が否めない。23年3月期の店舗数は「安楽亭」業態が157店舗で20年3月期から23店舗減。近年注目される「プラントベースミート」の導入やメニュー改定により、再起を図れるかが注視されている。

焼き肉チェーンの勝ち残り戦略は

 焼き肉チェーンに限らず、外食業界を苦しめてきたのが物価高騰だ。為替の影響と原油高騰、飼料高騰などで原価は急上昇し、一部高単価の和牛の卸値が下がり続けていることを除けば状況は厳しい。さらに物価高に伴う消費マインド低下・需要減も影響し、外食から食品スーパーで買って自宅で焼き肉をする人も増えるなど、先行きは不透明だ。

 さらには、労働需給のひっ迫、人件費の上昇と人手不足の問題も立ちはだかる。肉質や味を追求して客単価をアップさせることに活路を見出すか、それともスマートレジや給仕ロボットなど導入によりローコストオペレーションを極めるか。コロナ禍における“勝ち組外食”として注目された焼き肉チェーンだが、直面する課題は少なくなさそうだ。

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