追伸・無理解の壁 イオンの地域再編は残念な歴史の繰り返しか、新章スタートなるか
現場レベルでは現実的な対応策を模索・推進
一方、事業統合の当事者達=事業会社の経営者・現場担当者達は前に進むしかない。(トップダウンで突然、降ってきたかもしれない地域再編の指示に対して)できうる限り実効性のある施策を現場目線で模索・検討し、実行していくのみであろう。
北海道と九州での取り組みはその試金石となるかもしれない。両エリアともGMSとSMの統合であるが、アプローチは異なる。北海道は吸収合併方式(20年3月)、九州は持株会社設立予定(現時点)である。
北海道では、イオン北海道(GMS)によるMV北海道(SM)の吸収合併が完了し、3月1日付で新生イオン北海道が発足した。イオン北海道の青柳英樹社長は、19年2月期決算説明会にて、(GMSとSMの経営統合に関し)物流インフラ部隊に対して配送の最小単位をMV側に合わせるように指示している旨をコメントしている。
同説明会における青柳社長の説明によると、同氏はマックスバリュ(イオンによる旧MV)の創業プロジェクトに参画していたことでSMの特性を経験しており、SMの小ロット対応の必要性を認識しているとのことであった。
続く20年2月期中間決算説明会において、青柳社長は「地域単位で営業事業部をまとめるものの、お客さんがGMSとSMを使い分けていることを踏まえて、データを見ながら商品やプライシングをGMSとSMとで変える必要がある」と前回説明会から踏み込んだ考えを示している。
こうした方針の下、新生イオン北海道の取り組みは始まったばかりである。新組織におけるGMS・SMの運営が巡航速度に乗るにはある程度の時間が必要とみられるが、今後の動向は注目されるかもしれない。
九州では、GMSとSMはオペレーションが異なるとの認識に立った上で両事業を持株会社の下に置き、(一本化による統合効果が大きいと見込まれる) 商品面・管理面は持株会社に集約する方向で検討しているようだ。ただし、イオン九州はイオン北海道との意見交換もしている模様で、九州における統合方式の詳細は流動的かもしれない(イオン九州の柴田祐司社長はイオン北海道の社長も歴任しており、両社の情報交換は自然な流れとみられる)。
残念な歴史が繰り返されるのか、新章スタートとなるか
上記で紹介した通り、各地の地域法人はGMSとSMの経営統合に際しても現実的で実効性のある方法を模索・検討し、実行しようとしている。
小売業は“やってみないと分からない”ところがあり、走りながら修正していく面もある。1~2年後の成果はどのようになっているであろうか。
願わくば、新たな歴史の1ページが記されることを期待したいと思う。
桜の開花が進みつつも、まだ少し肌寒い桜並木を散策しながら、そんなことを思う今日この頃である。