無理解の壁・前篇~総合スーパー(GMS)の懲りない面々

2020/03/11 05:51
柳平 孝(いちよし経済研究所)

3月となった。2月決算企業の多い小売企業にとっては、新年度開始の月である。気分も新たにスタートを切りたいが、新型コロナウイルスの影響も広がりつつある。早期の収束を祈りつつ、今日も小売業界に少々思いを馳せるのであった(本稿は全3回からなる「無理解の壁」の第1回です)。

歴史上、直接事業運営したという点で、SMで成功したGMSは存在しない

歴史上、SMで成功したGMSは存在しない

 2019年10月に開催された202月期中間決算説明会から早くも半年が経過した。各社の経営トップが自ら語る成長戦略や経営方針を聞きながら、時折、思うことがある。小売業界においても、なぜ、同じような失敗が繰り返されるのだろう?と。1980年代の大人気コミック「北斗の拳」のアニメ版でのナレーション「悲劇は繰り返される」が思い出される。あるいはマルクス主義で有名な思想家・経済学者のカール・マルクスの「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」の方がしっくりくるかもしれない。もしかして、過去や他社の事例から学ぶことの乏しい人たちなのかもしれない。

 代表的な事例では、総合スーパー(GMS)による食品スーパー(SM)の運営をあげたい。少なくとも、GMSが単独でSMを成功させた事例を筆者は寡聞にして知らない。歴史的にSMで成功したGMSは存在しないと言ってもいいのではなかろうか。

 昨年10月の中間決算説明会シーズンにおいても、幾度か失笑・苦笑を禁じえなかった。まずは、セブン&アイ・ホールディングスである。イトーヨーカ堂の業績回復策と店舗政策の一環として「食品館」22店舗の分社化を視野に入れ、首都圏SMのヨークマートや日本を代表するSMヨークベニマル等とのグループ連携を強めるとのことであった。すなわち、自社では収益化できなかった食品館を切り出して、SM専業のグループ企業にお任せするということである。イトーヨーカ堂が「食品館」の展開を発表した時から“失敗が約束されていた”わけで(筆者は本件取材時、IR担当者に根拠を説明している)、上記の発表はノーサプライズであった。

 もう一つは、イズミである。イズミは西日本で大型商業施設「ゆめタウン」を展開し、商業施設の運営力や収益性の高さから優良GMS企業として知られる。そのイズミでも、SM事業の苦戦が続き、「SM改革」を打ち出すこととなった。当該「SM改革」の主な内容は、同社のSM事業の課題を“GMSの縮小版で高コスト体質”としたうえで、標準化を進めて店舗モデルを確立し、グループSMへ展開していく、ということであった。

 イズミの決算説明会資料では、反省点として“個店主義こそが全てという発想での店舗づくり”と“土日型の集客策のため曜日波動が大きく効率に課題”と明記し、今後の行動方針として“年内には、マネジメント項目を可視化し、KPI確立と環境整備を行う”と表明した。相応の危機感をもって、問題点の抽出と対応策を練ったと推察される。裏返すと、イズミといえども“(GMSSMの違いを)分かってなかった”ということでもある。

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