主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは?
ターミナルに百貨店という業態はそぐわなくなった
ざっくり言ってしまえば、沿線住民への価値提供を経営目標とする鉄道会社にとって、百貨店という業態がそぐわなくなっているからである。
百貨店は今や富裕層向け需要、インバウンド需要に特化しつつあり、沿線住民のための商業施設ではないから、と言ってもいいだろう。東京のターミナル駅の価値とは、その膨大な人流なのであるが、利用者の大半は富裕層ではなく沿線住民であり、百貨店ではそのニーズに応えてはいないという経営判断があるのだろう。大衆と乖離してしまった百貨店がターミナルの一等地を占拠している意味がないのである。
富裕層向け需要に対応するチャネルは主に外商部隊であり、顧客を相手するための場所は駅ターミナルである必要がない(混雑していると却って嫌がられるだろう)。駅前という人流一等地の投資効率を極大化しようとするなら、百貨店という選択はステークホルダーに説明ができないのである。
ターミナル駅に百貨店ができた昭和の時代、大型の商業施設といえるものはほかに存在していなかったため、富裕層も大衆層もまとめてお客さまとしてお迎えしていた。しかし、高度成長時代にスーパーマーケットが発展し、平成の時代には専門店とその集積であるショッピングセンターが次々に誕生してきたことで、買物の選択肢は広く分散していった。
生活必需品やカジュアルな商品の主要チャネルがスーパーマーケット、そして専門店集積へと移っていったことで、大衆層は百貨店を必要としなくなったのである。また、専門店集積が広い場所を求めて郊外に展開していったことで、ターミナルに期待される役割も変わりつつあるということもあるだろう。
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