日本のアパレルは勝てない!Z世代起点にするDholiCのビジネスモデルを解明!
驚きのアジアンビジネスの本質とは
「Z世代」起点にトレンドを遠くまで届ける
さて小売業では商品を選定する職種として、「バイヤー」と「マーチャンダイザー(MD)」の2種類がある。「MD」というのは、自社ブランドを企画し、納品配分や納期を自社で決める人だ。一方バイヤーは企画機能を持たず、「セレクト機能」だけを持っている。Dholicにはコスメ事業とアパレル事業の2つがあり、それぞれにMDではなく、バイヤーがいる。特に「韓国コスメは日本ではよく売れる」という。
さて、非常に効率的なビジネスを展開しているDholicをはじめとする中韓アパレルだが、なぜコロナ明けでも業績は悪化したままなのか。逆に、いままで中途半端といわれていた中間価格帯の服の方が売れているのはなぜなのか。
これは、人の心理として、リベンジ消費や円安などによる価格優位は、高額商品に効くからだ。つまり、普段百貨店などで高い値段で売っている商品こそ、「お得感」をより享受できるからだと考えられる。Dholicのような低価格帯を狙う商品は円安でなくとも、そもそもが安価な価格だ。だから、反動が生まれないのである。
驚くべきは、アジアでは歴史的に服の工場として君臨してきたため自然にD2Cが出揃う素地があったということだ。実際、東大門といえば日本の「ギャル服」の工場である。私は、「Sheinがマッチングサービスができたのは、ギャル服のもの作りの素地があったから」という大胆な仮説を展開してきた。だが、この説はかなり確度が高いと自負している。なぜなら、アジアの生産国のほとんどが、このやり方、つまり工場に企画機能やMD機能を配備しており、あとは、各社のアパレルバイヤーがその在庫をクラウド技術で掴み、自社のECのお客と工場の在庫をマッチングすれば大きな売上が作れるからだ。
これに対し日本は、繊維は国の基幹産業であったものの、今ほどデジタルを使った効率化やパーソナライズができず、産地をより安い場所へと「南下政策」を繰り返してきた。
この時代背景が生み出した差は非常に大きい。なぜなら、縫製工場から出てくる衣料品のターゲットは「Z世代」であり、ファッションの流行はこの「Z世代」を起点に、ウイメンズ衣料へ、そして、メンズ衣料へとスプリンクラー効果(水まきのように、より周辺の遠くまで『水(影響力)』をまく現象)を発揮できるからだ。もはやこれは仮説でなく、アジアンビジネスの形そのものだったということなのだ。
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