急成長下で見えてきた生鮮ドラッグの課題と限界、スーパーの反撃とは
“DgSの生鮮”から抜け出せない理由
ただ、小売関係者や専門家からは、フード&ドラッグの生鮮戦略に対する疑問の声も聞かれるようになってきた。
「あれを生鮮と言っていいのか」──。競合調査のためフード&ドラッグの店舗を複数視察したという、関東地方のあるSM企業の経営幹部はこう厳しく指摘する。「品揃えも少なく鮮度感もあまり感じられない。“DgSプラスアルファ”の域を出ていない」(同)。
もちろん、生鮮においても専門性の高い品揃えや売場づくりを志向するフード&ドラッグの店舗も存在する。ただ、そうした生鮮に関しての店舗間格差こそがフード&ドラッグの課題だとするのが、本特集でも調査に協力してくれたKTMプラニングRの海蔵寺りかこ代表だ。「生鮮領域では先進的なクスリのアオキすらも、導入したコンセや買収したSMのレベルに左右され、店によって生鮮のクオリティには大きなブレが生じている。一時は警戒しても、今では『生鮮を武器で十分に戦える』と踏んでいるSMも多いのではないか」(同)。
もっとも、「そもそも生鮮の位置づけがSMと違う」と指摘するのが、某ローカルSMと某大手フード&ドラッグチェーン両方での勤務経験を持つ元関係者だ。曰く、「フード&ドラッグの生鮮は、あくまでDgSに対する差別化を図ったもので、(在籍していた時点では)SMに対抗しようという考えはなかった」。
ただ、ある意味中途半端に生鮮に手を出したがゆえに、限界点も見えてきたという。「生鮮はコンセに依存するが、それぞれの部門(コンセ)がバラバラに売場管理やMD構築を行っており、それをまとめてコントロールする人間もいない。そんななかで高速出店が先行してしまい、そこに手を入れる余裕もなかった」(同)。
あくまでも「生鮮は品揃えの1つでしかない」と割り切るのであれば、結局はDgSとしての専門性(ヘルス&ビューティや調剤など)で勝負しなければならず、DgS間での同質化競争は避けられない。だからといって生鮮強化に本腰を入れるならば、遅かれ早かれ生鮮のサプライチェーン構築に大規模な投資が必要になる。どちらにしても超えるべきハードルは高く、方向性を考えあぐねている企業も少なくないのかもしれない。
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