単なる規模拡大は終焉!「循環経済」下で、ユニクロが採用すべき経営指標とは何か

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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 ESG経営は機会か脅威か

 こうした前提を踏まえると、これ以上の売上拡大・利益拡大を一義的な「成長」にしてしまうと、ますますSDGsの理念から離れてゆく。したがって、自由経済か計画経済かをまず選ぶことになるが、仮に計画経済が地球上に存在する全ての変数を包含できないのであれば、必然的に、ある程度の歩留まりを許容した自由経済下でのKPIが必要になってくるだろう。

 理想的には、自由経済だが完全歩留まりゼロ世界、つまり需要と供給が完全一致して付加価値を生み出し成長し、リソースは過去の資源を繰り返し使い続けることである。これが、原理・原則となる。

  バランス・スコアカードのように、複数の項目をだし、面積の大きさでパフォーマンスを図る考え方も一つである。一方で私は、この「歩留まり」の小ささを測り、企業価値・事業価値を算出できればよいのではないかと考える。

 そこで、第二次世界大戦の反省から国際連盟ができたように、地球環境破壊・人権侵害の反省から世界で共通の指標が必要になる。

 たとえば、「販売後の資源再利用率」と「その資源の回転数」などは新しい概念となるだろう。このほか、ペットボトルの再生繊維をアパレルにコスト負担させるなら、ペットボトル飲料を製造した飲料メーカーに課税するなど、原因と結果を正しく分析する必要もでてくる。

 人に欲望がある限り、株式市場と株式会社は変わることはないし、成長を前提しなければならないが、それは、「売上」「利益」である必要は無い。「新しい事業価値の大きさ」が循環社会のKPIとなり、その事業価値に「リソース活用の無駄のなさ」、という変数を加えるわけだ。

 例えば、アパレルであれば「売れ残り在庫」や「余剰フリーキャッシュ」などが非効率の最たる例で、ここをデジタル技術で算出する。これにより、効率性(無駄のない資源の使い切り)と成長性を掛け合わせた事業価値算定が理論上できることになる。

 何度も使い続けられ、実際に使い続ける素材は「プレミアム因子」として勘定。逆に、その製造工程で排出される二酸化炭素や余剰在庫・余剰くずはすべて「ディスカウント因子」として計算する。

 たとえば、卸売を媒体に国内と海外に販売と生産が分離しているアパレル産業では、アジアの生産拠点は我知らず、という感じになっている。だから、すべてを「神の手」に任せるのではなく、人為的に「プレミアム因子」と「ディスカウント因子」を複合し課税や補助金(減税)を加えるなどし、循環型経済下の事業価値の大きさがでるような仕組みに組み込む。

 同時に重大な人権侵害や環境破壊が発見されたら、そのレーベルに対して最も厳しい厳罰処分を出すという国際的な取り決めも必要になる。

 さて、私の論考はここまでだ。具体的なKPIや運用は日本が「これからの経済の中心であるアジアのリーダー」として、環境省、経産省が手を組み、自分はCO2,自分はGDPと縦割りに考えるのでなく、日産のようにクロスファンクショナルチームをつくり、その青写真の検討を開始すべきだ。このような活動には必ず「ビジネスチャンス」とみて、ロビイング活動を行う商社などが入り込みそうだが、第三者の視点として大学研究室、あるいは、経営コンサルティング会社と組み客観性を担保することが重要である。後出しじゃんけんで真ん中をとる八方美人政策では、乗り切れないほどのトレードオフがあちこちにできている。

 そして、世界トップのアパレル企業をめざしているファーストリテイリング、ユニクロこそ、このKPIを率先的に導入し、経営に組み込んでいただきたいと思うのだが、どうだろうか?

 

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

株式会社FRI & Company ltd..代表(2023年8月1日に社名を河合拓コンサルティング株式会社より変更)Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。最近ではAI企業、金管楽器メーカー、中国企業などのスタートアップ企業のIPO支援などアパレル産業以外にクライアントは広がっている。座右の銘は生涯現役。現在は自費で大学院で経営学の、独学で英語の学び直しを行っている。
著作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送サテライトTV」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議にたびたび出席し産業政策を提出。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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