アパレル大再編時代の真相、悲運のバーニーズをラオックスは再建できるのか?

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

 これに対して、1+2=3のままというものがある。これは、1が現金が枯渇して今にも潰れそうな状態になっており、多数の債権者、特に巨額な未回収債権を持つ銀行や、商社が存在するような場合。2は必要以上の現金をもっていて、投資も配当もせず自社株買いを繰り返しているようなケースに発生する。要は、銀行のような債権者が圧力をかけて、お財布を一緒にしてしまうわけだ。そうすれば、必要以上の現金はキャッシュショートを起こしそうな企業の財布と一緒になり、多くの債権者が(一時的に)助かる。と言っても、ネガティブキャッシュフローや売上減少など本質的な競争力に手をつけず、延命治療をしているだけだが、これを再生と勘違いしている金融屋が多いのは、財政出動が日本経済再生と勘違いしている政治家が後をたたないのと同じだ。これは想定だが、政府系ファンドがリードしたサンエーインターナショナルと東京スタイルのようなケースだろう。このケースにおいても、私はShrink to Growthのセオリーにそった成長戦略を描いたのだが、「金融が、、、」など、不可思議な説明で金融系コンサル会社に負けた。私が、取締役をやっていた企業でも、ゼロデット、つまり、借金ゼロの状態になったとき、元会長が「金融機関から、この会社の面倒をみてくれとうるさいんだ」と嘆いていた。ただし、その中にも、優良銘柄はある。経営者を変える、あるいは、経営陣を送り込んでグループ間シナジーを出すなどすることで、蘇る企業もあるからだ。古くは、大手付属会社三景を伊藤忠商事が買収した例で、伊藤忠商事のアパレル製品付属を一気に集約させて短期に黒字化させた。 

最悪のM&Aとは、銀行に押しつけられてから考えること

 私は、日本のアパレルのM&Aがどれにあたるのかをほとんど内部事情含めて分かっているが、このラオックスホールディングスもご多分にもれず、銀行様の「駆け込み寺」になっていたようだ。しかし、その理由だけは「謎」だった。みなさんは「ラオックス」と聞いて何を思い浮かべるだろうか?

 ある人は、外国人向けデューディーフリーショップだといい、ある人は、パソコンを秋葉原で売っている家電量販店だという。このラオックス、グループ事業内容を見ると、リテール、海外事業、アセット・サービス事業と書かれている。古くはオンワードと組み、越境販売をやっていたが、今はどうなのだろうか。私はこの3つに事業シナジーは全く見えないし、説明を何度聞いても事業ドメインが分からなかった。

  ラオックスホールディングスはCEOは中国人の羅怡文氏がずっと勤め、実務である社長職は日本人が担う経営体制で、つい先日前任者の飯田健作氏が社長を退任し、現在はダイエー出身の矢野輝治氏が社長COOを務めている。過去に私の知人も社長を務めたが数ヶ月で辞めてしまったし、私自身も同じ大学の先輩後輩の関係の方から推薦され、羅氏とお会いしたことがあるのだが、私などには目もくれず相手にもしてもらえなかった。

  それだけ、高い見識をお持ちの方なのだろう。さてラオックスホールディングスは2018年にカタログ通販の老舗シャディを傘下に収めているのだが、割と苦戦しているようだった。日本のカタログ通販が全滅しそうな中、生き残っている2社の再建と成長に大きく寄与した私を無視するほどの大人物だ。きっと、バーニーズも見事に再建してくれることだろうと思う。私の再建プランは、ファンドなどにまとめてだしているが、今回は公開せず静観させてもらう。見事、この悲運な大型専門店を再建し、ターンアラウンド・マネージャの私を相手にしないほどの高い見識で皆を驚かせていただきたいと心から願う次第だ。

 

河合拓氏の新刊、大好評発売中!
知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!

話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

1 2 3

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態