ユニクロに迫るZOZOに死角なしの構造的理由 ミドル世代強化でファッション市場制圧なるか
ZOZOTOWNに出店する大きな果実と代償
ZOZOの中核事業であるZOZOTOWNに出店すれば、あなたのブランドを買う顧客は、ZOZOTOWNに自分のクレジットカード情報を登録する。つまり、ZOZOTOWNに出店する企業は、顧客をZOZOにささげることになる。
市場が成長している時代は、フロービジネスといって、通りすがりの顧客に販売すればよかった。だから、トラフィック(交通量)の多い場所にリアル店舗を出せば売上が伸び、トラフィックの多い場所の家賃地代は高いのだ。しかし、今は、限られたパイを競争力のない1万5000社の企業が奪い合う時代だ。こういう時代には、顧客を囲い込んだ企業が勝利の美酒を味わうことができる。これをストックビジネスといって、ZOZOは、1000万人を超えるファッション購買層を持つ巨大な顧客会員をもっている。だから、企業が出店すれば確実に売上は上がるし、売上を上げようと出店すれば、それによってZOZOTOWNの魅力は増し、ZOZOの会員は増え、ZOZOの売上も利益も増えることになる「正のループ」ができ上っているのだ。
私は、10年前にこの構造を講演で説明し、ECモールに容易に出店してはならないと警報を鳴らしていた。私は、通販企業の役員をやり、コンサルタントを6年もしていたため、統計学などの科学的手法を駆使し、いったん網にかかった顧客を逃がさずに、逆に自社PBを買ってもらい、利益率の高い他の製品をクロスセルさせるなどしていた経験を痛いほど分かっていたからだ。しかし、EC販売市場が少数のECガリバーに寡占化された今、自社ECを使って売上を上げることは極めて難しく、時すでに遅しということになった。競争力のない企業はこれからもZOZOの軍門に降り続けることになるだろう。また、ZOZOがはじめたコスメ事業や、Yahoo!ショッピング事業などとクロスセルを行い、ZOZOはどんどん日本で成長してゆくことになる。
財務資料から見るZOZOの戦略 総合ECへと向かう!
まず、ZOZOの事業の全貌を解説したい。上記のZOZOTOWN事業というのが、いわゆる我々が知っているEC事業だ。この「委託販売」というのが、企業がZOZOに出店する見返りに顧客を差し出す事業である。ZOZOからすれば、在庫リスクはゼロ。中国のモンスター企業のSheinもそうだが、勝ち企業というのは常に在庫リスクを持っていないことが多い。
これに対して、買取・製造事業というのは、ZOZOのPBで在庫リスクを持つ事業である。この事業は、ZOZOSUITで有名となったが製造が思うように行かず、一時はとまったが、オンワードの生産背景を借りることで解消したように見えた。その後、ZOZOSUITの改良版がでる・でないという噂が流れたが、あまり話題にはなっていない。私は、ZOZOはもはやリスクをはってPB事業に乗り出す必要はないと思っている。この事業の構成比はたったの0.9%で、1%以下だ。これに対して、委託事業は76.2%。ZOZOの収益は在庫リスクがゼロの1000万人を超える優良顧客を活用したビジネスとなる。
USEDは、昨今のSDGs対応、私が予言したように今後広がるであろう二次流通市場を狙ったもので、将来への投資といえる。ただ、このUSED事業の構成比は2.9%にすぎず、これもまだ収益の柱とはいえない。次に、構成比9.2%のYahoo!ショッピングは、PayPayモールが合併したもので、ファッション顧客へのクロスセルを狙い、Amazonのような総合EC通販企業へと脱却するための布石だろうとみている。ちなみにPayPayは順調に投資期間を過ぎ、2023年2月のプレスリリースによると、登録ユーザーが日本人の1/2近い5500万人(注 銀行口座からのチャージが可能になる本人確認<eKYC>を完了したユーザーは1500万人)という顧客基盤をもっており、ここから総合通販への道をたどるのだと思われる。ただ、競合にはAmazonや楽天などが構えており、単に決済にPayPayを使っているからといって、通販も簡単にポイント連携などで頂けるわけではない。
次に、B2B事業というのは、昨年、ユナイテッドアローズが撤退して話題になった事業だ。これは、ZOZOが自社のECインフラを、クライアントの自社通販のように見せて使用させる事業だ。これは、EC初期投資が少なく自社ECを立ち上げられる、ZOZOTOWNと在庫連携ができるという利点がある一方で、ECを自由にカスタマイズすることができないという欠点もあり、ユナイテッドアローズはリスクを冒してでも自社ECに移行したのだと思われる。この事業が3%程度で、あとは広告事業だ。
これらを総合していえることは、ZOZOの成長は、「委託販売」という蟻地獄に日本のアパレル企業をはめ、ますます事業拡大しながら、Yahoo!ショッピングとクロスセルを行って決済と物販を両方兼ね備えた総合通販へ展開するという戦略であることだ。また、ZOZOの成長の流れはもはや止められないように見える。
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