年商4億円の焼肉店が打つ、大不況時代の対策と勝ち筋とは?

2023/02/27 05:55
佐藤 良子
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まだ不調の夜業態、その対策は?

 2210月の外食産業全体の売上規模は19年同月比105.5%(日本フードサービス協会資料より)と初めてコロナ前を超えた。しかし、一方で夜営業中心の業態だけで見れば前年同月比60%にとどまり、夜はお客が戻っていないことを数字が示している。飲食業の中でも比較的コロナ禍では強かったとされる焼肉業態も依然厳しい。そうした中、古川氏は先に紹介した宴会場を昼中心の業態であるラーメン店にしたり、大不況時代でも利用しやすい「タクミートストア」にしたりという布石を打った。

 一方で、既存店はどうしていくかというと「今後、席数を絞って1席におけるプレミアム感を打ち出す方向性」と古川氏は話す。というのも、コロナ禍を機に未曾有のリスクにどう対処するのか考えた結果、出て来た答えが「店をリピートしてくれるファンのお客さまに向けて営業することだった」からだ。

 広告費をかけてクーポンなどを呼び水にディスカウントして新規顧客を得るのではなく、ファンから「予約させて欲しい」と思われ、常にファンで埋まる店づくりを目指すというのだ。

 そのため、同店ではLINE公式アカウントで友達になってもらうことを「ファンクラブ会員」と呼び、来店1回につきスタンプを押して10個たまると「プレミアム会員」にランクアップ。

 「タクミートストア」と同時期にオープンし、同店のセルフサービスに対してフルサービスを売りにしたハイエンド焼肉店「黒毛和牛研究所」などは、入店に「ファンクラブ」加入が必須で、「プレミアム会員」はドリンク3杯無料にし、優先的に予約を取れるシステムだ。

 1席の価値を高めた上で、予約が取りづらくなったとしても「ならば通販を利用してみよう」と通販に誘導し、そこで通販のリピーターを増やしたり、逆に「通販が美味しかったから実際に店に行ってみよう」と、来店につなげたりするような構造を目指しているという。

 「材料や人件費の高騰、インボイス制度、終わらない戦争…来年以降は本当に未知の世界だと思っています。“食べること”は無くならないと思うので、大不況になっても食べる場所が店なのか、家なのか、キャンプ場なのか、場所が変わるだけ。需要のあるところに、高度な冷凍技術で美味しい肉や総菜を通販できるよう整えています」と古川氏。

 大不況時代でも利用できる間口を広げた「タクミートストア」。対してプレミアム感を強めた店を作り、通販事業で下支えをする企業構造で、どんな有事をも迎え撃つ構えだ。

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