ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情
変化1 2023年はAI元年となる
ここで、上述も踏まえたうえで、2023年に起こるであろう3つの変化について解説したい。
1つ目が「2023年はAI元年になる」ということだ。
一部のデジタルベンダーは、アパレルビジネスの本質を理解せず、無限の力を持つAIを、単なるDBの代わり程度(デジタルベンダーには、DBという言葉も分からないだろう、ディストリビューターである)にしか思っていない。
だが私は、今年はAIを活用した使える技術が次々と生まれるだろうと思う。実際、私のところには、今になってAIを活用した驚くべき技術、例えば、我々人類が見たことがないようなデザインを無限につくり続けるようなことができるものが誕生した。私自身、AIに相当の自分の時間を使おうと思っているほどだ。
変化2 エセSDGsは淘汰される
2つ目がSDGsについて。今のSDGsは、キャスティングも議論の進め方もすべて間違っている。
「先進国の成長は止まり、成熟経済にはいってゆく。一方、東南アジアとインドは今後、大きく成長する」という、まことしやかにいわれている話は本当なのか、しっかり検証してみてほしい。
そして、仮にそれが本当だとしたら、成長がとまった時代に、いかにして私たちは資本主義と付き合ってゆくのかという本質的な問いに対する答えを、国や地方自治体が出すべきだ。
例えば、私はアダストリアの「O0U」(オー・ゼロ・ユー)というブランドに注目している。このブランドはオーガニックコットンなどの素材を使い、日本では珍しく、この論考でも紹介したHigg Indexに準拠した生産を行う、正真正銘の「サステナファッション」である。
だが、全く話題になってもいないし、同社のIR資料をみても「その他」で括られ、おそらく赤字ではないかと思われる。
15~49歳の70%は環境意識をもっているが、そこにお金を出すか否かということになると5%程度しかいない。このように私は、マーケティングで言うキャズムが存在することを再三指摘したのだが、やはりその通りの結果のようだ。
もし、このブランドはそんな下世話な世界のものではない、というのであれば、私はやはり、上記の本質的な問いに答え、このブランドをアダストリアが展開する理由を明確にすべきではないだろうか。
また、同社が否定しているファストファッションの権化であるSheinの店舗に4000人が並んだという事実、また、消費者がForever21に期待しているものと、同社がこのブランドの大改革を行うフリクションをどうするのか、その方針も聞いてみたい。
利益以上に大事なモノがあるといいたいなら、それは何かを明確にし、同社が、同社が考えるサステナカンパニーになればよいと私は思う。
しかし、我々が住んでいる世の中のゲームのルールが資本主義である以上、この戦略は大きな矛盾の壁に当たることになるのではなかろうか。このことは私がずっと主張してきたことである。
変化3 日本の素材技術は壊滅
次に、日本の素材技術の話。
日本の素材は、海外の投資家から巨大なマネーを呼び込み、業界を震撼させた。
岡山のデニムに代表される素材産業は、日本の商社を含めてあまりにマーケットを知らず、老人達が「腹落ち」しない投資は絶対やらない、という方針のもと、もはや身動きがとれなくなっている。できることは過去から脈々と続くアパレル企業のOEMしかない。誰もが未来がないと考えながら、なぜか仕事を続けている、という妙な状態になっている。
もはや商社から提案をすることもできないし、私のようなコンサルを雇うのは、商社でなくむしろアパレル側だ。日本の素材産業には戦略がないのである。
最後に、M&Aによって起こる、顧客データの統合に関わる問題点をクリアにしたい。
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