ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情

河合 拓
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M&Aできない企業が淘汰される事情

metamorworks/istock
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 ちなみに、このように神の領域にしか見えないマーケティングでも、パソコンを自在に操る「人」がいなければ、新しいクラスターは見えない

 したがって、類い希なる「マーケティングセンス」を持ち、同時にコンピュータを自由に動かせるデータサイエンティストと呼ばれる人間が必要となるのだ。

 ひとえにデータサイエンティストといっても、日本ではAIを活用して、教科書通りの分析をする人間は沢山いる。

 だが、そのような人はデータサイエンティストとしては失格だ。

 データサイエンティストには、町をじっくり観察すれば、世の中のわずかな変化に気づき、「ひょっとしたら世の中はこうなっているのではないか」と、いう初期的仮説(分析力)を持つことが重要なのだ。その仮説を、ビッグデータを使い、ターゲットの新しい購買特性をデータから証明するのである。

 残念ながら、そもそも日本のアパレルにはデータといえるレベルのものがないため、現時点ではデータの整理整頓を必死にやっている段階だ。こうした状況を情報システムに「なんとかしろ」と押しつけ、また、ビッグデータアナリシスとは何かを理解せず、「我が社は100万人の顧客データをもっています」といっている経営者をみれば、この企業のデータマネジメントのレベルがわかるというものだ。

  こうした段階から一気にデータを整理し、腕の立つデータアナリストを捕まえる方法は何だろうか?

 それは、弱り切った通販会社を買収し、アクティブ顧客(まだデータとして活用できる)を入手するということである

 日本企業は、こうした企業買収を使った自らの「七変化」をわかっていない。資本主義では、経営が弱り切った場合、株価は落ち資金は枯渇する。つまり、新たな資金の出し手(投資家)が必要となるわけだ。

 ところが、自ら金の卵である顧客データをもっているにも関わらず、「金がない」の一点張りで投資もできない会社がほとんどだ。

 だからこそ、企業内に腕の立つM&Aコンサルを参謀として雇う、あるいは、そのような人材を外部から採用して、そうした「金の卵を持つも、投資のできない会社」を選別し、買収するのである。

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