いまAmazonが百貨店をつくる意味 リアル店舗の役割の変化と壮大な実験とは?
アフターコロナのリアル店舗の役割は広告塔
それでは、経済回復後の店舗の役割は何か。それは、
また、地方のショッピングセンターやホームセンターは、休日の家族の憩いの場、あるいは、DIYやアウトドアが好きでたまらない人のたまり場となっており、こうした場も一定数は残る。しかし、テナントや商品は、物販と体験場が半々ぐらいになるだろう。家電やアパレルはショールームや試着による「サイズ計測場」となり、生鮮食品やレストランは従来通りで変わらない。また、店舗を出しても赤字になるような人口が少ない場では、世界観を得るためにVR (仮想現実)技術が活用され、ハイテクゲーム機では当たり前となっているVRゴーグルによるバーチャル空間によるお買い物が一般的になり、生鮮食品のような必需品はネットスーパーや生協のような宅配がラストワンマイルを補完する。
企業側の視点で言えば、体験場であるリアル店舗は広告塔などコストセンターと物販のプロフィットセンターの中間的な位置づけとなり、管理会計も業態によってパフォーマンス・メトリクス(業績評価指標)は立体的に変化する(単体で赤字でも、間接的に利益がでれば良しとするなど)。こうした話をすると、そのKPIを教えろ、という質問が山のようにでてくるが、そもそもKPIというものにユニバーサル(一般化されたもの)なものは存在せず、個別企業の戦略によって変わる。わかりやすく言えば、目指すべき姿が北海道にあるのか、沖縄にあるのかによって「今、山梨県にいる」となれば、行き先が北海道であれば「後退した」と見るべきだし、行き先が沖縄ならば「前進した」となるわけだ。
日本で壮大な実験が起きない理由
しかし、日本では新型コロナウイルスを本気で封じ込めようという気持ちがあるように思えず、むしろ、このウイルスと共存する道を自ら積極的に選んでおり、自ら考える力を失った日本人を洗脳しているのではないかと思われる。このようにいうと、「犯人はだれだ」と聞く人が後を耐えないが、双方向に情報が飛び交い、スピーカーのハウリングのように、自然発生的に世の中がある方向に動き出すのが、デジタル情報過多の時代の特徴なのだ。
こうした問題は、主犯が存在しないだけに解決が難しい。結局は、国民のクリティカルシンキング(批判思考)がどれだけ強いかという、教育の問題にかかってくるのだが、最大の問題は、私たちはこうした教育を受けていないことだ。むしろ、「河合くんは、なんで他の子ができることができないの」と、その他大勢と同じことをしろ、という具合に個性を踏み潰す教育がなされている。
こうした背景と、なかなか押さえ込めない新型コロナウイルスとの関係は無関係ではないだろう。いずれにせよ、こうした経営環境、競争環境が続けば、ECの衣料品比率が15%程度しかない日本のアパレル産業はさらに打撃を受け、壮大な実験も我が国では不要となるかもしれない。私が、Amazonのみならず、楽天、Zホールディングス(ヤフー、ZOZO)の三大プラットフォーマーの小売事業のシェアが益々増え、特に同社の中で成長著しいアパレル産業のシェアが増えてゆくと断じるゆえんだ。
*河合拓単独ウエビナーを9月30日に開催!
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https://ameblo.jp/takukawai/entry-12693219873.html
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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