アパレル業界再編勃発! ビームス、アマゾンにPB供給開始は再編の序章
迫り来る外資系企業の買収攻勢
冒頭で、世界のトップメゾンが、いよいよ「日本買い」に動き出したことを述べたが、あえて名を伏せ公開に踏み切った。おそらく、私は日本には買う価値のある値頃感のあるアパレル企業はごく少数だから、買収対象は日本の工場でないかと見ている。その答えもこの数ヶ月で出るだろう。残念ながら、日本のアパレル企業が日本の技術を買っても販売力が無いため無駄死にする。
ただ「されど日本市場」である。9兆円の市場の中で、1兆円のファーストリテイリングを除き、ほとんどの企業に国際競争力は無いが、中にはZ世代を中心に、我々老人の購買特性とは価値観がまったく違う消費者層が出現し、産業の担い手になる可能性は否定できない。彼らZ世代は国境を越えるSNS活用によって国際間における価値感の違いは無く文化の国際感覚ももっている。こうした層を対象にした、世界企業になり得るスタートアップが日本のECモールに潜んでおり金融市場でも売却対象になっている。今後は外資がファンドを使って買収攻勢をしかけてくると私は思う。私は、いくつかのファンドによるアパレル買収の後ろに商社や外資企業がいることを知っている。
Amazonとビームス提携が意味すること
ビームスは、Amazonとの共同ブランド「Look by BEAMS mini」を7月1日スタートした
数々の米国アパレルを死滅に追いやったAmazonだが、日本で中々頭角を現さない。しかし、新型コロナウイルスもワクチンによる収束が見えてきたのか、先日 セレクト御三家の1つ、BEAMS(ビームス)と提携した。ビームスが発表した資料によれば、キッズウエアを提案するBEAMS miniが、Amazonと共同ブランド「Look by BEAMS mini」を7月1日スタートした。
考えてみれば、ZOZOもセレクト御三家からスタートし業態を広げていった。Amazonは、ここ日本で幾多のイベントを行い、その登場を我々に期待させてはフェードアウトを繰り返しいまに至っている。時を待ち着々と準備をしてきたと見るべきだ。日本でファーストリテイリングに勝負を挑めるのは、Amazon Market Placeぐらいだろう。BEAMSとの提携はその序章とみるべきだ。私がAmazonなら、BEAMSに専用品を供給させ日本品質のPB開発を企画から学ぶ。その後は、弱り切ったアパレルや小売を買収する可能性が高い。いや、Amazonに限らず、私は、Sheinなどのアジアのアパレルも、有り余る潤沢な資金と。今後暴落する可能性の高い円を背景に日本企業に資本参加し、世界第三位のファッション消費国日本での衣料品供給をしながらブランド力を高め、アジア全体に事業展開するのではとみている。
総合商社も、伊藤忠商事以外は繊維ビジネスに見切りをつけ、カーヴ・アウト(事業の切り離し)を行っているし、セブン&アイ・ホールディングスもアパレル企業の切り離しに入っており、ボディーメイクで有名なRizapもワンダーコーポレーション・ハピンズ・ジーンズメイトが3社統合しREXTを設立するも苦戦が続いているようだ。
例えば、セブン傘下であるバーニーズの西武渋谷店への出店は、攻めているように見えるが、すでに報道されているように米国スピードウエイ買収で、二足のわらじを履いている余裕などないはずだ。新宿店の閉鎖はトータルで考えなければならない。例えば、バーニーズ ニューヨーク西武渋谷店の広さは264m2 つまり、100坪もない小型店だ。ここから類推するに、ターゲットはセレクトショップであり、過去伊勢丹がなし得なかった百貨店の小型店化を行い事業価値を少しでもあげようとしているのではないか。
当然、Rakuten fashionやZOZOを傘下に持つヤフーも弱り切ったアパレルに買収・事業提携をしかけ、DX化とグローバル化を推進してくるだろう。実は、その動きも私は知っている。
こうした動きは、政府の過剰貸し出し資金の回収も目処がたっているとは思えず、外圧による産業再編が最も自然なシナリオだ。「金融主導の業界再編」が具体化してきたということである。つまり、あれだけ騒がれた「デジタル祭り」も、外資企業やファンドに買収され、金融主導でDXが行われるということになる。
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