日本のアパレルではもはや流通改革は成し遂げられない絶望の理由
商社に無茶ぶりする既得権益受益者が「窓際族」!?
一方、経営コンサルタントになり、アパレル側に入り込んでその苦悩と課題に直面していると、面白いことがわかってくる。
まず、アパレル企業の中で、生産部というと、どちらかというと本流から外れように見える人が多い。
この例でもわかるように、なぜかアパレル企業の生産部の人間は、いわゆるジョブローテーションに加わらず、何年もずっと同じ生産部にいる。アパレルではMD(商品政策)が花形で、生産部は特別のように見えるのだ。そこで私はその理由について、いくつかの経営者に尋ねたことがある。
その回答はいずれも、「生産の仕事は専門性が高いし、海外経験がないと務まらないから簡単にローテーションできない」というものだった。例外はあるにせよ、これがアパレル企業の本音なのであろう。
このようにいうと、アパレルの生産部の人は、一見高度専門職か「窓際」に見えるわけだが、実際は「窓際」どころか、商社の手厚い「接待」を受け、海外で豪遊して帰ってくる人も多い。そのため、場合によっては商社に「たかりや」などと呼ばれ、「おいしい」思いをしている人も少なくない。これは今でもそうで、実際に昨年、私はある会社で「銀座で30万円」という伝票を見たし、エクスペンスカードが1ヶ月500万円というのもあった。使途不明金でなぜかシートを2名分予約しヨーロッパ出張などという信じられない金銭感覚をした人もいまだにいるのである。また、私自身が生産をやっていたから、ルール違反(口約束発注し、納期が遅れれば怒鳴り散らし、都合が悪くなれば反故にする)をたくさん見てきた。ある会社では、生産改革の結果、簿外在庫と言って帳簿には現れない在庫が山のように出てきたこともある。こうした事実を白日の元にさらした結果、ある担当者がアパレルを去ったわけだが、気づけば取引先の役員になっていたこともある。
コロナ禍において昨年、4月、5月に日本中の店舗が閉まった事件を覚えているだろうか。あのとき、売上数千億円の企業が、数億円しか売り上げのない工場に在庫を押し付け、約定を入れておきながら返品をしたという話があったが、こんなものも日常茶飯事だ。半製品や原材料を持ちたくないという理由から、それを数億円の工場に押し付け、いざとなったらキャンセルするというアパレルも少なくない。私は、そういう生産担当者に何人もあったが、「自分はキャッシュフロー経営をやっているんだ」と高笑いをしていた。これらは、皆が知っている上場一流企業で、今でも起きている。ある準大手アパレルは、納期遅れに対して、1日につき4000万円のペナリティを課している。そういうことをするから、FOB (アパレルの仕入れ単価)が上がるのだ。ユニクロのように全てを見える化し、リスクも利益もフェアに分かち合えば良いだけなのだ。
一事が万事こうだから、商社や工場がアパレルなどと本気でお付き合いしたくないという気持ちはわからないでもない。実際に調べてみると、数千億円企業が組織的に中小企業いじめをやっているのではなく、単に生産担当者が自社内で格好をつけたいからだけで中小企業をいじめているのである。本来であれば、こうしたやり方は犯罪である。中には皆もよく知っている上場企業が下請法(下請け法とはこうした中小企業イジメがおきないよう、
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