世界でアパレル不況が同時に起きた本当の理由と勝ち残りの道
セグメントの細分化が進み、やがて絶対単品と絶対個人の関係性になる
このように、昔の商品回転率がどうだからどうだなど、単に公式を当てはめてものごとを考えるのでなく、当たり前のことであっても、状況の裏にあるメカニズムを分析し、因果関係を明らかにした上で要素分解し、新しいマーケティングセグメントを組み立てるのが戦略思考である。
企業のプロパー消化率が落ちてきたのは、こうしたメカニズムが相互作用しながらインターネットの広大な世界で、自我を押さえつけられてきた人達を仮想空間で繋ぎ、新しいバーチャル・クラスター(仮想空間の中の同一購買嗜好集団)を形成しているからだ。
つまり、新しい同一嗜好性を持つ購買集団は、日本中に霜降り牛の脂のように存在し、また、自己増殖や枝分かれしながらアメーバのように分裂と新種を繰り返す。これがトレンド細分化のメカニズムである。だから、商品動向を前提とした、ざっくりとした、いかなる予測も当たらないのである。
バーチャル・アメーバ・クラスターは、ますますナローキャスティング(プロモーション・ターゲットの括りが狭くなることをいう)が進み、最後は、RFIDによる絶対単品とビッグデータによる絶対個人が1対1との関係となり、マーケティングという概念は近いうちに消滅しする。こうした構造分析をしないからAIによる未来予想など、技術は素晴らしいが向いている方向が的外れなソリューションが生まれているわけだ。
したがって、今後、プロパー消化率の向上をめざすのであれば、絶対個人と絶対単品の組み合わせを個社が持つビッグデータから分析し追いかけなければならずAIはそこで活躍することになるだろう。そこでは、企業やブランドが持つ特殊性を加味した極めて高度な分析技術が必要になる。構造を理解すればハイテク技術も日の目を見る。
このように、構造改革の原因を知れば、あまりに単純でバカげた実態、人災と既得権益によって業界破壊は進み、結果金融主導で再編が起きるのだ。今、私にはシークレット講演が殺到し、参加者は金融機関ばかりで100社を超えているほどだ。
私は、こうした事実から様々な予言と提言を行っている。数字ながないなどいわれる筋合いは全く無い。数字というのは、企業・事業のオペレーションの「結果指標」であり、未来を予測するものではない。むしろ、そのオペレーションが動く環境構造メカニズムを解きほぐすことが重要なのだ。
今年は、企業買収が盛んに起き、体力のない企業は外資、内資関わらず飲み込まれ、作りすぎの問題は事業所破綻という形で、外圧によって解決されることになる。なんともパッシブなことだが仕方ない。これが実態だからだ。私のヴィジョンは私は成し遂げられなかったが、きっと誰かが私の志を引き継ぎやってくれるだろう。今は、自分のできる範囲でささやかながら業界の生き残りに貢献したい。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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