地方SMとして自主路線に回帰、基本を徹底し営業力を磨く!=近商ストア 中井 潔 社長

聞き手:下田健司
構成:サテライトスコープ:森本守人
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今年4月に発足した純粋持株会社、近鉄グループホールディングス(大阪府/吉田昌功社長)は、鉄道を中核に、不動産、流通、ホテル・レジャーなどの事業を手がける。近商ストア(大阪府)は、近鉄グループで流通事業を担う主力企業の1つ。大阪府、奈良県、京都府で食品スーパー(SM)42店舗を展開する。競争の激しい関西でいかに優位性を発揮し、成長に結びつけるのか。中井潔社長に聞いた。

既存店売上が好調 約10%の伸長率

──今年4月、鉄道事業を中核とする近鉄グループは、純粋持株会社制に移行しました。近商ストアはグループの中でどのような位置づけにありますか。

近商ストア 代表取締役社長 中井 潔
近商ストア 代表取締役社長 中井 潔(なかい・きよし) 1952年(昭和27年)1月生まれ。75年3月関西学院大学法学部卒業、4月近畿日本鉄道入社。09年近畿日本鉄道執行役員流通事業本部副本部長。09年近鉄リテールサービス(現近鉄リテーリング)社長。10年近鉄レストラン社長。14年5月近商ストア社長。15年4月近鉄リテーリング社長。
 

中井 近鉄グループホールディングスは、鉄道を中心に、不動産、流通、ホテル・レジャーなどの事業を展開しています。流通事業を手がける企業の1つに、物販、飲食など近鉄の「駅ナカ」事業を行う近鉄リテーリング(大阪府)があります。近商ストアは、近鉄リテーリングの100%子会社です。昨年5月に近商ストアの社長に就任しましたが、現在、近鉄リテーリングの社長も兼務しています。

 近鉄グループの各事業会社は、経営環境が大きく変化するなかで、柔軟でスピード感のある対応が求められています。各事業会社の権限と責任を明確にし、迅速な経営判断を下せるようにしたのが、純粋持株会社制に移行した目的です。近商ストアと近鉄リテーリングはそれぞれSM事業、駅ナカ事業を通じて、近鉄の沿線価値を向上させる役割を担っています。

──どのようなSMをめざしますか。

中井 地方SMとして自主路線を歩もうと考えています。SM業界では、地域に根差した経営で生き残っているチェーンが少なくありません。当社も地域に根差したSMをめざしたいと考えています。大阪府、奈良県、京都府に42店を展開していますが、店舗規模は売場面積500平方メートルから3000平方メートルまでさまざまです。商圏特性も、各店舗で違いがあります。このため、画一的な店づくりではなく、地域ごとにきめ細やかな対応が必要になります。

 これまで、店舗の標準化に向けた方向性を探った時期もあります。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長)と11年に資本・業務提携し、効率的な経営手法について学んできました。しかし、当社の事業規模では十分な競争力を発揮できないと判断し、昨年6月に提携を解消しました。

──大都市圏のSMの業績はおおむね好調ですが、足元の営業状況はいかがですか。

中井 15年3月期の売上高は、上半期が対前年同期比2.8%増、下半期が同5%増で、通期で606億円でした。決算期を変更した16年2月期は7月までの累計で、既存店売上高は同9.9%増、客数同6.7%増、客単価同3%増と、好調でした。とくに5、6月の既存店売上高伸び率は10%を超えました。8月に入っても好調を続けており、このペースでいけば売上高は630億円を達成する見込みです。

小売業の基本を徹底する「サービス向上の重点取組」

──好調の要因は何ですか。

中井 昨年6月、社長に就任し、営業方針として最初に打ち出したのが、売上の拡大に集中することでした。利益率も重要ですが、そこに目を向けすぎると、現場がロス率の低減を優先させてしまい、売上を増やすことができず、中途半端な結果に終わることが多いものです。そこで、まずは目に見える成果を出すため売上を伸ばすことを最重要目標に設定しました。

 そして、お客さまに楽しく快適に買物していただけることを目標に掲げ、その徹底に取り組んできました。それが6項目からなる「サービス向上の重点取組」です。具体的には、「清潔な店づくり」「明るい店づくり」「欠品のない売場」「フェイスのきれいな棚づくり」「笑顔での挨拶」「身だしなみの統一」です。

 「サービス向上の重点取組」は、基本的な項目ばかりですが、徹底するとなると、案外、難しいものです。「清潔な店づくり」では、店舗を美しく保つために掃除をする。「明るい店づくり」では、実際の明るさだけでなく、明るく元気な接客を心がける。「笑顔での挨拶」では、つねに笑顔を絶やさず、お客さまに対して積極的に「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と声かけをする。「身だしなみの統一」はサービス業の原点です。昨年、ユニフォームを一新しました。

 これら6項目が店舗で実際に行われているかどうかを確かめるため、外部機関による3カ月に1回の覆面調査も実施しています。各店舗を採点し、調査結果を社内で公表しています。

 私自身も定期的に店舗を回り、自分の目で現場の状況を確認しています。事前の告知なしに店舗を訪れ、店長はじめ従業員と話をします。現場では適度な緊張感が生まれているようです。

 こうした取り組みが営業面の成果に結びついており、手応えを感じています。近鉄沿線にある当社店舗の立地は、競合他社にはないアドバンテージです。これを生かし、「近鉄ファン」のお客さまに満足していただけるような店づくりを追求していきたいと思います。

──店舗の従業員の意識に変化はありますか。

中井 いいえ、まだまだです。これら基本項目を徹底させる一方、力を入れているのが教育や表彰制度です。各店舗で顧客満足度の向上に取り組むリーダーを選任したほか、チェッカーコンテストや技能コンクールを開催しています。従業員の意欲を高めるため、優秀者は表彰しています。

 ビジネスで重要なのは「人」です。近鉄グループでこれまで仕事をしてきて強くそれを感じます。従業員のモチベーションを上げることが企業の強さにつながります。今後も、そのための施策を講じていきたいと考えています。

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