間違いだらけのサステナブル経営 アパレル業界は「成長を望まない社会」の生活提案をすべきだ
循環型社会で企業戦略は激変する!
企業戦略も変わる。私が予言したように、アパレル企業のほとんどは死に体となっており、政府の指示で銀行が下支えしているだけで、いつかは連鎖倒産が起きると予測したのだが、先日の日経新聞によれば、銀行の不良債権を買い取り、再生をするファンドを立ち上げるという。私は、こんなときこそ企業競争力と卓越した戦略を持つ「真の改革者」を活用し、業界再編を推進せよ、提唱してきたのだが、お役所はとにかく入らぬ手を下し、将来の返せない借金を増やしているように見える。そんなことをすれば、コンサル会社やIT企業の仕事が利権化するだけで、産業の新陳代謝は起きないし日本という国は全く変わらないし、どんどん国の競争力は落ちてゆく。
さらに、最近の私の仕事は、「競争から協創へ」というキーワードの通り、これまで競争相手だった企業が手を結び、新しい化学反応を期待した事業を推進しはじめ、私はその取り次ぎ役のような仕事も開始した。国民の税金をつかった事業は、公開が原則で守秘性はないため、学生が殺到しこうした社会変革を一緒にやりたいという人からの連絡が多くなった。
これからは、ポストキャピタリズムに対する国ごとの「幸福の定義」も必要になる。イギリスのようなPFI(Private finance initiative)や、資本家のいない生活協同組合のような業態に近い事業も生まれるだろう。実際、私の最近の再建の仕事は、単なる競争戦略の枠を超え、公的資金を活用し地場産業を救う、あるいは、公的資金と私的資金の融合をモデルとした、新しいビジネスモデル設計もやっている。
従来の強いものが勝つという論理では、繊維産業のように、5年ごとに産業がリセットし産地移転してしまう業界は、本来、例えハードは産地移転しても、ソフトは国に残すべきだ。先人達の英知を絞って積み上げた匠の技や技術は承継されてゆく。公的資金は、こうした営利目的でない産業LABOなどに使われることになる。いわゆる、私の知財LABO構想である。具体的な企業名はいえないが、蓄積したデータを企業群に公開し、ゆるやかなネットワークを構築したプラットフォームを作る動きもある。
このように、私たちを取り巻く環境は大きく変わっているのだ。これ以上成長をしない社会の中で、成長を前提とした企業は何をすべきなのか。これこそ、人の生活をささえる衣食住の「衣」を手がけてきたアパレル産業が先導してやるべき仕事なのだ。
河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-25ワコールを追い詰めた「三つの革命」
- 2025-12-02HUMAN MADE上場から考えるファッション産業の構造的限界
- 2025-11-27急拡大するリカバリーウエア市場を攻略する
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2022-04-22ユナイテッドアローズ重松理名誉会長が語る、創業秘話とビームスを立ち上げた理由とは
- 2025-11-26業態別 主要店舗月次実績=2025年10月度
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2025-11-24間違いだらけのアパレルDX改革、根本から変えるべき「KPIの設計哲学」
関連キーワードの記事を探す
大胆な発想の転換が必要な時代 ECとQRに対する大きな誤解と新戦略
大パラダイム変化のアパレル、今までとは次元の違う発想が必用な理由
アパレルの離職率低下のためにすべきこと、やってはいけないこととは





前の記事
