#17 目指すは業界統一? 八ヶ岳連峰経営でついに関東進出を果たしたアークス・横山社長
陣営を超えた統合で業界3位も視野
アークス立ち上げとともに福原、旭川のふじ(現道北アークス)という当時の上場スーパーが自ら進んで合流した背景には、こうした横山氏の一貫した姿勢がありました。北東北で宿敵関係にあったユニバース、ジョイス、ベルプラス(ジョイスとベルプラスは統合を経て現ベルジョイス)が相次ぎアークスに加わったことは、地元の人たちを驚かせましたが、これも横山氏という媒介役がいたからこそ実現したと言えます。
「お山の大将」だらけの食品スーパー業界は、プロレス界のごとく業界団体が乱立していますが、「食の安全や環境問題、消費税率問題などで業界の発言力を高めるにはこのままではいけない」と団体統一に尽力してきたのも横山氏です。09年に日本セルフ・サービス協会と全国スーパーマーケット協会が合併して誕生した新日本スーパーマーケット協会(現全国スーパーマーケット協会)の会長に就任。13年に合意した日本スーパーマーケット協会との合併は白紙に戻ったものの、オール日本スーパーマーケット協会(AJS)を含む3団体が合同で食品スーパーの全国販売統計を毎月発表するようになったのは、横山氏の功績でしょう。
アークスが来年3月に統合を予定するオータニの売上高は294億円(20年8月期)。アークスは関東に足場を築くとともに業界3位に浮上する可能性が出てきました。それ以上に注目したいのは、オータニがAJSの加盟企業である点です。AJSは共同仕入れ機構の性格を兼ね備えた組織ですが、シジシージャパンの加盟社が主体のアークスに他陣営の企業が加わるのは異例です。
アークスは18年、AJS加盟企業のリテールパートナーズなどと「新日本スーパーマーケット同盟」という新たなアライアンスを結成しており、横山氏を軸に今後さらに大きな「団体統一」への動きも予感させます。
アークスの発足以来、社長を務めてきた横山氏も来年の誕生日で86歳。経営の第一線で戦える時間は徐々に短くなっています。とはいえ、横山氏の求心力によって勢力を拡大してきた企業だけに、代わりに誰が社長の椅子に座っても、中央集権と地域密着の絶妙なバランスが崩れてしまいそうな気がします。要は「スーパースターには代わりがいない」ということ。アークスの今後に不安があるとすれば、その点でしょう。
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