#3 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さん、ユーストアをつくる

千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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変哲のない売場に見えすぎてライバルが革新性に気づかない

 何もない安い広大な土地に売場面積450坪以上、駐車台数200台以上、坪当たり投資金額40万円未満(当時)の店舗を出し、田舎に住む人たちの毎日の生活を満たす。

 ユニーの既存店舗と競合しないばかりか、競合自体がまったくなく、需要を独り占めできる。

 建築コストを最低限に抑えた普請でも、地元住民からは「こんなところによくお越しくださった」と感謝の意をもって大歓迎される。そもそも家田さんには「店舗は雨露がしのげればいい。お客さまは店ではなく、商品を買いに来るのだから」という信念があった。

 もちろん店内はノーフリル。飾りっ気はまったくない。

 不良在庫、不動在庫を持ちたくなかったから、商品は親会社ユニーの売れ筋商品ばかりに絞り込んだ。安く仕入れるために商品は完全買い取り返品なし――。

 「売れるものを、売れるときに、売れる場所で、売れるだけ、売る」という“四売の原則”を説き、商品を高速回転させて、また儲ける。

 一方では、大きな労働力と商品ロスリスクを強いられる水産部門と総菜部門にはコンセッショナリー(名前を出さない専門店)を導入した。

 夜逃げするためには、親会社のような豪華な本部はご法度だ。だから、小さな本部を実践し、その分、店舗への権限委譲を推進した。それが店舗のやる気を喚起する。

 小さな本部は、中長期計画さえ持たなかった。「小売業は短期の目標数値や現状把握の方が重要だ。中長期計画から数字が乖離したら、その修正の方が大変だ」という理由からだ。

 ユーストアは、画期的で革新的な新しい食品スーパーだった。だが、あまりにも変哲もない店舗に見え過ぎて、そのことに気づいていた者は業界内外を見回してもほぼおらず、長くノーマークだったのである。

 会社設立に当たっては、ユニー在籍時に担当していたユーマート事業(ローコスト&ディスカウント業態)を立ち上げた時に起草した行動指針「5つの誓い」を転用した。

  1. 公明正大であること
  2. 他人の仕事に積極的に口を出すこと
  3. チームプレーに徹すること
  4. 開放的雰囲気をつくり出すこと
  5. 無責任な仕事はしないこと

 というものだ。これは後に振り返り「できがよかった」と自賛している。

 同じように経営理念も掲げた。

  1. 厳しい規律のなかにも自由で楽しく働ける雰囲気の職場を作ろう
  2. その土地で一番良いと言われる店を作ろう(品質、品揃え、接客において)
  3. 自分の一生を託するに足る会社を作ろう

 とはいうものの、この時点でユーストアが抱えている問題は何も解決してしない。

 しかしながら、窮すれば通ず。

 ここから家田さんは本領を発揮する。

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記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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