日本のアパレルで「見当違いのロジスティクス改革」が横行する理由と本当に改革すべきこと
倉庫の生産性向上のために、今すべきこと
本来、商社こそこういうことをしなければならないのだが、付属業者達が集まってこうした取り組みをやり始めているから、バリューチェーンがいつまで立っても個別最適から抜けられないのである。
このように、日本の倉庫業務の生産性の低さは恐ろしく、Amazonなどが先んじてやっている「自動倉庫」こそ、日本企業がやるべきことで、高い生産性とCS (顧客満足度:すぐに商品が届く)向上に繋がる。さらに、物流でいうなら、日本中に張り巡らされた道路を使えば、わけなくイオンモールなどに届けることが可能だが、問題は積載率といって、ブランドがバラバラに荷物を運んでいるため、トラックに積んである商品が総積載率の50%程度で半分は空気を積んでいることにある。さらに、ラストワンマイルの2c(対顧客)の世界に目を向ければ、約20%は再配達であり、ここを改善しなければ物流業務のコスト削減には繋がらない。このように、国が違えば事情も違う。現場を見ないまま改革を行おうとしても何ら問題解決にはならないのである。
2019年は、こうした「デジタルありき」の改革の多くが効果をださず、多くの企業が学んだ年だった。こうした失敗から2020年は、いよいよ正しいやり方、あり方でデジタル化が進んでゆく。
さて、前回と今回をまとめると以下の3つとなる 。
- 存在価値のない企業(アパレル・商社)の統廃合が起きる
- その結果、生き残った企業の正しいデジタル導入が進み、仮想敵としてユニクロをターゲットとしたブランド戦略に本腰を入れる企業が生き残る
- 上記戦略を正しく実行するためには、信頼できるパートナー(コンサルタント)との協業による戦略回帰が必要だ。自前主義ほど危険なものはない
コロナウイルスで世界経済が停滞している中、多くの企業にとって厳しい状況が続いている。しかし、こうしたときほど、慌てず、そして創意工夫をしながら耐えるべきだ。長いトンネルも前に進めば必ず出口が見えてくる。2020年も引き続き、皆さんと一緒にビジネスについて考えてゆきたい。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)