日本のアパレルで「見当違いのロジスティクス改革」が横行する理由と本当に改革すべきこと

河合 拓
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 SPA(製造小売)の時代なのに
販売しか知らないコンサルがほとんど

 また、コンサルタントの選定もしっかりやる。どれだけ有名なファームであっても、どれだけ著名な方であっても、「業務の細部」を知らないコンサルは使うべきでない。特に、多くのコンサルはリテール領域(販売)の部分には詳しいが、バリューチェーンや生産に関しては素人ばかりだ。今は、SPA (製造小売)の時代である。文字通り、「製造」と「小売」が一緒になっており、上記のような発想は製販のすべてを知らなければ出てこない。

  製造のことを知らずにウェブやオムニチャネル販売支援の改革ばかりを行うから、本丸ともいえる商品について、なんら差別性のないものが大量投下され余剰在庫が増える。例えば、OTB (Open to buy 仕入れ枠管理) という、余剰在庫を抑制する手法があるが、どの教科書を読んでも私には全く理解できない。

  私の考えは至ってシンプルだ。そのブランドが持つ、「プロパー消化率」で割り戻した金額・数量が、売上計画となるよう、在庫に足りない分を加えるというものだ。したがって、例えば、プロパー消化率が50%のブランドが、売上100を作るには、理論上、売上見合い(仮に在庫がプロパーで売れたとしたときの売上金額)で200分の在庫が必要となる。そのとき、繰り越し在庫が150残っていれば、新規に50を仕入れるし、在庫が250残っていれば仕入をせずに翌月に同じことをやればよい。

  これを月次ベースで行い、備蓄した素材を使って計画生産を行い、できるだけ長い期間売れるような商品を工夫して投入してゆく。また、できるだけライトオフ(商品滅却)までの期間を長く持ち、予測がずれた時の調整弁を持つ。ライトオフの期間が5年あれば、5回「やりなおし」ができる。

  こうして、仕入れた在庫をすべて売り切る。なんら難しいことではない。実際、私はこのやり方で企業を幾度も危機から救った。現実には、もう少し複雑になるのだが、正しい理論というものは、シンプルで分かりやすいものである。奇をてらった理論、あるいは、複雑な数式で、読むものを煙に巻く理論は絶対に組織に浸透しない。

 こうしたモデルを作る力を持つためには、教科書に書いてあることを暗記してはダメだ。今の市場環境や顧客の購買行動の変化、競合の変化などをしっかり理解し、自分の頭で考える。例えば、私は、米国などの事例やグローバル事例はほとんど参考にしない。日本のアパレル企業は、無類のブランド好き国民の日本人を対象に日本市場の中だけで戦っている。世界にビジネスを展開し、デニムとTシャツ、ネルシャツばかり着る米国人の理論とは全く違うのだ。

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