#12 新型コロナ感染拡大が促す「脱リアル店舗」という競争の新局面
北海道の近未来、英国で進むネットスーパー巡る激しい競争
北海道と市場構造がよく似ていて、なおかつ一歩先を行くのが英国のスーパーマーケット市場です。占有率27%のテスコ、15%ずつのセインズベリー、アズダの「3極」合計シェアが60%弱。4番手のモリソンズを含めた「ビッグフォー」でほぼ70%と、リアル店舗の寡占化が進み、市場占有率が固定化している点は、北海道とそっくりです。
北海道との違いは、英国市場の競争が「脱リアル店舗」に移行しつつある点です。これについて日本貿易振興機構(JETRO)が18年11月に「英国のネットスーパー市場に関する調査」という詳細なレポートを公表しているので、それを参考に話を進めましょう。
17年の英国のネットスーパー売上高は113億ポンド(当時のレートで1兆6740億円)で、グロサリー市場全体に占めるシェアは6.7%と、まだリアル店舗には遠く及びません。それでも市場規模は5年間で1.7倍と急成長し、英国の消費者人口に占めるネットスーパー利用者の割合は29%(16年)と、およそ3人に1人が利用するまでになっています。
英国のネットスーパーで首位に立つのはやはりテスコで、17年の売上高は推計で32億8800万ポンド(4870億円)。これは同社の英国・アイルランドの小売事業売上高の8.5%を占め、英国内のネットスーパー市場におけるシェアは32%と実店舗以上の強さを見せている。サービス開始は14年と比較的最近ですが、英国内にフルフィルメントセンター(FC=ネットスーパー専用の倉庫・配送センター)を6カ所持ち、配送エリアは全世帯の99.7%に及ぶというのですから、その経営のスピードには驚かされるばかりです。
セインズベリーはかなり早期にオンラインサービスに参入(1996年開始のワイン配達)し、17年のネットスーパー市場ではシェア14%と2位につけていますが、テスコとの差は開き、3番手のネットスーパー専業企業、オカド(シェア13%)に肉薄されています。
セインズベリーにとっての誤算は、18年に合意したアズダとの合併が、英国の独禁当局に認められずに破談してしまったことでしょう。これが実現していれば、ネットスーパー市場のシェアは25%に達していたことになります。オカドの親会社のウォルマートは、本国・米国で展開するネットスーパー事業で成長軌道を取り戻しており、それらのノウハウを結集し、テスコの強力な対抗勢力になっていた可能性もあった。
一方のオカドは世帯カバー率が74%にとどまるものの、積極的な技術開発投資を行い、受発注や商品管理、ロジスティックスなどネットスーパー運営システム全般で自動化やロボット化を進めています。先進的なネットスーパーの運営フォーマットを「オカド・ソリューション」としてライセンス化し、他の小売業者に提供することでも収益を上げており、英国ではモリソンズなどが導入しています。
さらに注目すべき存在がアマゾン・フレッシュで、英国市場参入2年目の17年の売上高は2億ポンド(296億円)と、早くも8位に食い込んできました。
リアル店舗のシェア争いではほとんど勝負が決した感のある英国市場ですが、ネットスーパーという成長分野ではプレーヤーの力関係も変わり、新しい競争がスタートしていることがよく分かります。これは北海道市場の近未来を考えるヒントになります。
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