新規参入が簡単ではない?コープさっぽろ、「物流で参入障壁」つくる戦略の全貌
ダイヤモンド・チェーンストア誌8月1日号「コープさっぽろ 北海道コングロマリット戦略!」で特集したとおり、従来の生協の常識と枠を大きく超えて成長する生活協同組合コープさっぽろ(大見英明理事長、以下コープさっぽろ)。競合の顔ぶれが変わり競争激化する中、店舗事業のさらなる成長戦略を具体的にどう描くのか、そして「生協としての強み」を最大限生かす、ほかの小売「企業」にはできない戦略とは何なのかを明らかにしたい。

コープさっぽろ概要
本部所在地 北海道札幌市西区発寒11条5-10-1
出資金 897億7825万円(24年3月)
事業高 3186億円(24年3月期)
組合員数 201万人(24年3月)
“黒船”到来も動じないワケ
北海道の人口は1997年の約570万人をピークに減少が続く。2040年には、現在の約510万人から428万人へと急減する見通しだ。
そうした中、競争環境は新たな局面を見せている。上位寡占化が極端に進む道内食品小売市場ではこれまで、イオン北海道(青栁英樹社長)、アークス(猫宮一久社長)、コープさっぽろの3陣営が約3分の1ずつのシェアを獲得して「3極」を形成していた。「その他」勢力であった西友(東京都/大久保恒夫社長)が道内店舗をイオン北海道に売却、また道内撤退した「イトーヨーカドー」の後継として、2店舗をロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)が承継することが決まっている。さらにロピア親会社のOICグループ(同)は各種報道で北海道内に5年以内に25店舗を出店する計画を明らかにしている。
この激変する競争環境に対して、全道に107店舗を展開し、店舗事業の供給高(一般企業の売上高に相当)1983億円(23年度)を稼ぎ出すコープさっぽろはどのような打ち手を施すのか?
大見理事長の見立ては明快だ。

「北海道は3極で8割のシェアを持っている。歴史上、上位集中の小売マーケットで逆転させた例はないうえ、この状況はメーカー戦略に大きな影響を与える。これだけ寡占化するとナショナルブランド(NB)メーカーは全方位的な戦略をとれなくなる。3極のどこかとタッグを組まなければ、新商品を大きく展開できなくなるからだ。また3極のどこかがプライベートブランド(PB)を強化すればするほど、NBを売る拠点としての存在価値は残る2陣営で高まっていく。そうした3強のパワーバランスを、“黒船”は覆すことはできない」
メーカーが寡占化市場の北海道でシェアを高めるには、テレビCM中心から脱却し、タッグを組む小売が抱えるお客にどこまで深くリーチできるかがポイントになるというわけだ。そのために効力を発揮するのが「リテールメディア」だ。コープさっぽろが広告代理店のコープメディアを23年に立ち上げたのも、この状況を踏まえてのことである。
ウォレットシェアを高める戦略
このように店舗事業でも有利なポジションに立つコープさっぽろだが、競合店が増えれば影響は避けられない。そこで
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