誰も語らなかったZARA圧勝の秘密2 欠品だらけでも消費者が満足する理由とその仕組みとは

2020/01/22 05:55
河合 拓

「誰も語らなかったZARA圧勝の秘密」第2回。多くの書籍やメディア記事でZARAの強みとされていることは実はなんという事もないことで、強みとはなり得ないものばかりである。それを立証するとともに、クローズアップされたことのない取り組みに実はZARA圧勝の秘密が隠されていることを解き明かそう。

Photo by tupungato
Photo by tupungato

 

メディアに表面的な強さだけを取材させ
その本質はひた隠しにするZARA

  ZARAについて書かれた書籍、論考は多い。しかし、同社は数年前から実務を知らないメディアの人間のみをスペインに招待し、自社の凄さを世界に知らしめているPR戦略をとっているが、業務経験者は絶対に招待しないことで有名だ。だから、メディアには「ZARAは凄い」という記事ばかりが掲載するが、その裏にある「勝つための秘訣」は誰も知り得ない。ここがわからなければ、フォーエバー21が破綻に追い込まれ、H&Mの調子が良いとはいえないのに、ZARAだけが一人勝ちしている理由が説明できない。
 「すごい」だけでは、我々は何も学ぶことはできないのである。
 ここで、同社について書かれたものを要約すると以下のようになる。

  • ZARAは売り切り御免型であり作り増しをしない。この売り切り御免型が店頭の鮮度を保っている
  • ZARAは原材料を備蓄し、欧州の自家工場で計画生産を行っている
  • ZARAは最速二週間から一ヶ月で商品をつくることができる
  • ZARAは店舗発注をしており、セントラルバイイングをしていない
  • ZARAは48時間以内にFedExで世界中の店舗に商品を送ることができる
  • ZARA店舗はストックを持っておらず、店頭にある商品が全てである

  これらの情報は、世界的なコンサルティングファームが書いた本、ZARA本社の中に入ったという人間、そして、数多くのメディア記事から作成したものであり、すべて二次情報を前提とした仮説であることを最初に断っておきたい。
 さて、このジグソーパズルを解きほぐす前に意外な事実を伝えたい。アパレル業界を30年間見てきた私から言わせてもらえば、ここに列挙されたことは、実は日本のアパレルは20年前からやっている、ということである。つまり、これらは、なんらZARAの強さを立証するものではないのだ。

  例えば、売り切り御免など、しまむらもやっているが同社の業績は悪化している。また、原料の備蓄は商社もやっており、実際、私自身もブロックブッキングという手法でやっていた。
 リードタイムについても、二週間、一ヶ月など、現場の人間からしてみれば驚くことではない。ワールドが全盛期だったとき、生機で生産した衣料品を長野県の染色工場に備蓄し、一週間で染め上げて店頭に並べていた。店舗発注も、昔のマルキュウアパレルは普通にやっていたし、国内生産をやれば48時間どころか24時間で店頭配送が可能だ。
 つまり、鬼の首を取ったように語られるこれらのZARAの特徴は、日本のアパレルは大昔からやっていたことばかりなのだ。

  さらに、「売り切り御免が店頭鮮度を保つ」というのは自己矛盾をはらんでいる。MD業務では、売れ筋と死に筋予想ができないから期初企画の初速を見てQR (クイックレスポンス)ECR (イフェクティブ・コンシューマ・レスポンス)を発達させたのだ。QRを世界で初めて開発し、日本に導入したカートサーモンのトップをやっていた私がいうのだから間違いない。売れ筋もわからないのに、毎度、売り切り御免の「博打ビジネス」をやれば、アパレルは余剰在庫の山になり即死するだろう。

  つまり、これらの分析や情報は、アパレル未経験者、アパレルの歴史を知らない人間が書いたもので、アパレルビジネスのトレンドセッター(トレンドを自ら作り上げる高回転型ビジネスモデル)の分析としては不十分であるということなのである

  しかし、自画自賛かもしれないが、私は、これらの点と点をつなぎあわせ、同社圧勝の秘密をモデル化することができる。私は、その仮説(圧勝のモデル)を検証するため、まだZARAが門戸を開いていた時代、ZARAの本社に入ったというワールド出身の複数の人間とのインタビューに成功した。

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