シーイン模倣騒動と大差ないアパレル業界のパクリ体質 シーインがそれでも勝つ理由
アパレル産業は将来の成長産業
さて、今回最後に伝えたいのは、アパレル産業に対する正確な認識だ。
アパレル産業に関する典型的な誤解は、この産業は「オワコンである」という一般認識だ。実際業績不振の企業は恐ろしく多く、将来を悲観して、多くの有望な若手社員がアパレル業界から去っているという。
だが、改めて考えてもらいたい。私が何度も言っているように、もしオワコンなら、なぜファーストリテイリングが時価総額世界第一位になり、米国のファンドが2000億円も払って日本のマッシュスタイルホールディングスを買収するのか? なぜ、バロックジャパンは中国のファンド傘下に入り成長を続けているのか? という問いだ。
答えられるだろうか?私が主催するアパレル研究会で得られた理由は以下の3つだった。
1.日本人は高付加価値(の商品、サービス、ブランド)を作ることができるがその評価ができない。だから、良いものは外国に持って行かれ、海外で騒がれると日本人は騒ぎ出すという。
2.コミュニケーション能力の問題も大きい。これは、単純に英語ができるできないという話ではなく、「論点をはっきりできない」というビジネススキルの欠如によるものだ。独特の言い回しを多用することで、問いに対する回答がわからない、あるいは、結論がないまま話しが進んでゆくこともしばしばだ。
3.分析力の問題もある。例えば、「うちのポチはよく吠える。甘やかして育てたからだ」と聞けば、ほとんどの人が「ああ、犬は甘やかせて育ててはいけないのだ」と思うだろう。だが、その前提条件として、「ポチ=犬」だと思い込んで、その前提を明らかにしようとは思わない。もし「ポチ」が「猫だった」ら、その時点で認識が大きくずれることになる。
とくにデジタル用語は、定義を聞くと色々な解釈がでてきて定まっていない。例えば、D2Cなど最たる例だ。
日本のアパレル産業はオワコンではないのだ。問題は自分たちにあり、そのやり方さえ間違わなければ、いくらでも成長できるというわけだ。 そうでなければ、マッシュスタイルホールディングスの件をはじめ、上記で説明したようなことが起こるはずがないのである。
シーインの件も、安易な勧善懲悪で思考停止に陥るのではなく、その強さの本質を知り、自社として何ができるかを深く考えるべきだ。
プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2019-04-12柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
関連記事ランキング
- 2024-12-10ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
- 2024-11-26イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い
- 2024-12-03ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-12-17あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-09-26無印良品の一部となる三菱商事ファッションとユニクロ:Cの成功が意味することとは
関連キーワードの記事を探す
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ