クルマよりカバンを売る方が儲かる世の中で、ESG経営が行き詰まる明快な理由
「ESG経営」に取り組み時価総額が上がったアパレルはゼロ
私たちは、何も考えず「世の中に、良いことは良いのだ、未就学児童に働かせるアジアのかわいそうな人を放っておくのか!ESG経営、いいじゃないか。これからは企業もそうあらねばない」という風にSDGsやESG経営を理解している。
誰も論理的判断ができず、「右向け右」となる風潮は私は非常に怖いと思う。無謀な戦争に突入した時と同じではないか。
チェルノブイリ、フクシマの惨劇を見て「原発反対!」と、これまた心情的に反対するのも同じだ。それでは原発惨劇は、原発が持つ十字架(防げないもの)なのか、それとも人災(防げたもの)なのか。そこについても誰も建設的に議論しようとしていない。
日本の電源構成比は約80%が火力などの化石燃料で原子力は5%程度だ。例えばフランスのマクロン大統領は22年2月、新たに原発を増設することを発表した。フランスは元々、原発依存率が高い国ではあるが、「カーボンニュートラル」を具体的に目指すのであれば、最もエネルギー効率が高い原子力の可能性を再度見直すということは、ある意味理にかなっていると私は思う。
日本は「カーボンニュートラルを目指す」と言いながら、原発に対する国民的議論を避け、エネルギー効率の低い再生エネルギーの普及に頼ることで都合の良い数字だけ作って、あとは問題を先送りしようとしている。「怖いから」と何もせず、「いつか吹く神風」を期待しているのだ。はるかにフランスの方が現実的で論理的だ。
同様に、私たちは「ESG経営」にも、その意義を再検証する必要があると私は思う。私たちは、なんの根拠もなく、「これから株価を上げるためにはESG経営が必要」と信じているが、今のところアパレル業界で「ESG経営」に取り組み、株価を上げた企業はゼロとのことだ。これは、ある証券会社のアナリスト達と議論をしたとき調査部から出た事実だ。
このことは何を意味するか?
論理的に以下の3つのいずれかとなる。
1)企業がやっている「ESG経営は偽物」(正しいやり方をすれば上がるかもしれない)
2)「ESG経営をやっても株価に反映されない」(株価とESG経営に因果関係はない)
3)「まだ株式市場が成熟しておらずESG経営と企業の将来収益との関係が見えない」(株価とESG経営の因果関係はあるかもしれないし、ないかもしれない)
しかし、このどれなのかを突き詰めて考えている人は誰もいない。だから、企業はIRに押しつけ株主対応をさせるか、企業イメージ向上の一環としてESG経営を利用するかのどちらかだ。誰も本質を考えようとしていないのだ。
さらにフィナンシャルタイムズが21年に報じたことによると、いくつかの有力企業が「ESG経営が収益にネガティブインパクトを与える」ことを明らかにし始めているようだ。
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