クルマよりカバンを売る方が儲かる世の中で、ESG経営が行き詰まる明快な理由

河合 拓
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なぜ今SDGsなのか。なぜ、ESG経営なのかを語れるか?

表面的な「サステナファッション」で盛り上がるアパレル産業に問いたいのは、本当に素材を自然由来にして、余った在庫を回収すれば、企業の抱える課題を解決できるのかという本質的な問いだ。私は、過去の連載で絶望的な日本市場の未来について語り、多くの取り組みは、ほとんどが企業視点で消費者側のメリットが何も見えないと言い続けた。「時既に遅し」となる前に以下の3点をすぐに実行に移すべきだとも述べた

  1. 消費者にとってメリットが見えない形だけのD2C /OMOでなく、明確にこれまでと違う価値が提供できる衣料品・ブランドを実現するD2C / OEMとは何か。
  2. 日本市場は今後縮小しかなく、これからの10年、日本の人口の1/365歳となり、さらに、労働人口、消費人口は7%落ち、期待の「Z世代」は総人口の15%しかいないし、彼らは古着を買うし無駄な消費はしない。一人あたりGDP30位まで落ち、実質賃金は横ばいで非正規社員が増加。一刻も早く海外にでること
  3. これまでの乱脈経営のツケ(流動資産に隠された腐った在庫)を市中に出し、バランスシートを健全にする、また、そのような戦略・MDしか組めなかった責任者を明確にして総入れ替えする。純血主義を辞める。あるいは若手を英才教育し全く違うビジネスモデルを行う

 ターンアラウンドの鉄則は、臭いものに蓋をすることを絶対に避け、すべてをさらけ出すことだ。また、都合の悪いことを先送りせず、思い切って膿は出すべきだ。

今、多くのアパレルは補助金狙いしか生き残る道はないほど産業界は悪化し、もはやどうしようもないところまで来ている。

産業が衰退し、イノベーションが生まれなくなるときは、国民が考える力・批判する力を失い、ポピュリズム政治が広まって「何も考えることなく、あとをついてゆく」ようになったときだ。「サステイナブル・ファッション」、「ESG経営」について、今一度その意味や因果関係を考えてみていただきたい。

 

 

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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