小売の出店相次ぐメタバース、アパレル企業の救世主か一過性のブームか?
メタバース、VRはソフトウエア勝負
何ができるかにかかっている
![Thinkhubstudio/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2022/02/iStock-1348369701.jpg)
これに対して、メタバースは確かに映画館と遜色ない程度のリアリティはもっているが、まだまだゲームの世界を抜け出していない。まだ小売ビジネスがメタバースの世界の中で広がらない「致命的な論点」は、自分と全く違うアバターが登場し、自分の顔や体型と違う人間が着たコーディネートを体験したところで、なぜその商品を買おうと思うのかという疑問である。
メタバースというのは、冒頭に書いたとおり、全く違う異次元の空間の中に、自分であって自分でない人間が「没入」する。
だが、メタバースについて私は、魔法の杖のように世の中にAIが広まった時と同じ既視感を感じている。メタバース空間で仮想の土地売買が盛況になりNFT (デジタルコンテンツを唯一無二にして複製できなくする技術、本物である証明などに使う)を使ったオークションで、有名人が最初にツイートしたメモが何千万円で売れたといった「SFチック」な話がばかりが横行し、我々の日常のお買い物と関係ない話だからだ。
また、私自身、VRゴーグル(仮想現実を体験できるメガネのようなもの)を使っているのだが、使っていて重大な点に気が付いた。
VRゴーグルはいくつかのメーカーがバラバラに製品をだしており、私は、有名だったからという単純な理由で、オキュラス・クエストを購入した。だが、SONYや韓国製のものもある。それぞれのVRゴーグルで使えるアプリが違うのである。
私は、自分が住んでいる渋谷を闊歩したかったのだが、オキュラス・クエストにはそのようなアプリはなかった。
つまり、VRゴーグルのみならず、VRの世界は、ハードウェアではなく、ソフトウエアの勝負になるということだ。なぜ、マイクロソフトが8兆円も出して、ゲーム会社のアクティビジョンを買収したのか、その理由がはっきりわかるというものである。
オキュラス・クエストに話を戻せば、確かにジェラシックワールドなどは、一瞬身震いするぐらい恐竜がリアルに襲いかかってくるような感覚に陥るし、米国の有名な歌手のライブ中継を視聴すれば、ノリノリになることができる。だが、身もふたもない話かもしれないが、私はそれほどアメリカの音楽を聴く習慣はないし、同じ恐竜の映像も2回見れば飽きる。
このほか、発展途上の技術だと思うが、企業で使う色々なソフトウエアを統合し、アバターとなって会議室で議論をしたり(社員が全員ゴーグルをもっていることが必要)、データを魔法のように空間に映してプレゼンテーションをしたり、ビジネスオフィスを立ち上げるアプリもあった。今、オフィスを探している私にしてみれば、これは、将来、最も早いスピードで広がり働き方の概念を変える力があるなと感じた。
私は、自身が講師を務める「河合塾」の生徒に、不動産投資は港区にしろといってきたが、それも怪しいかも知れないと思うようになった。まず、このゴーグルが普通のメガネになるだろう。そして、きっと、「オフィス」も要らなくなるだろうし、通勤という概念もなくなるかもしれない。このビジネス分野は、オキュラス・クエスト上では小さいが、Microsoftはこの分野を狙い、同社のTEAMSと融合させ、急拡大をめざすと思う。私にはハッキリ見える。
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
![河合拓のアパレル改造論2022](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2022/01/kawai_2022_main.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=e9dc3f80edc0322e9898e59423e5b4dc)
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2024-06-29ファストリ12 兆円越え!上場小売業時価総額&ROA ランキング2024
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2023-11-07いまや日本ブランドを超越!国潮ブームでも「ユニクロ」だけ中国で好調な理由とは
- 2023-11-14GMS衣料のジレンマと真実!イトーヨーカ堂アパレル完全撤退の必然とは
- 2024-01-09ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
関連記事ランキング
- 2024-06-25「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-07-02日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは
- 2024-06-04定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
- 2024-07-09あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム
- 2023-01-06SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-24業態別 主要店舗月次実績=2024年5月度
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは
関連キーワードの記事を探す
値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
ファストリ12 兆円越え!上場小売業時価総額&ROA ランキング2024
ユニクロ式多頻度・小幅値下げとシーズン末大セール、どちらが得か
値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
ファストリ12 兆円越え!上場小売業時価総額&ROA ランキング2024
店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは