Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは
下北で分かった!
日本の二次流通の今と未来
米国では、二次流通はデニムから始まり広がっているようだ。
デニムの場合、新品の生地をウォッシュするとき、石などを入れたり化学薬品を入れて色落としをしたり、手で破ったりと、あらゆる手を使って「ヨレ感」を出す。
その手作業代金がデニムを数万円という価格に押し上げるわけだが、二次流通なら普通に何年も消費者が使ったビンテージものが買える。写真のようなデニムがヨレ感もあり柔らかい風合いに落ちているものが3000円だ。これは欲しくなると私は思った。
これに対して、日本のアパレル企業のマーチャンダイザーは欠品を恐れ、在庫がないことを極端に嫌がる。在庫を自社が売る力以上に仕入れをすることが常態化しているのだ。
マーチャンダイザーは「どうせ売れ残ってもバランスシートに資産として残しておけばいいや」「服袋や優待販売で売れば良いのだ」などと考えているのである。これは、マーチャンダイザーの評価が、在庫を正しく時価評価した後の利益額となっていないからである。だから、セール優待では、新製品が30%-40%、中には80%ディスカウントなどという商品が当たり前なのだ。
我々グレイヘアは、中古の楽しさや格好よさを正しく評価できないし、金持ちは、メンズでいえばLEONの世界をいまだに追いかけているから、オーバーサプライの二次流通が広がらないのだ。人が着た古着と、安く買える新品では、後者の方が良いに決まっている。日本で在庫問題が解決するのはまだまだ先で、企業数が半分になる10年後の「新型コロナ対策資本性劣後ローン」返済年度に爆発することだろう。
このように、二次流通の世界は甘くない。中古品、余剰在庫品など、訳あり商品には残った「訳」があるのだが、下北で私が見た景色は二次流通と言っても、そこには技術があり、ノウハウがある。
1)売上至上主義から利益額(率ではない)をKPIとし、2)在庫は、在庫の残存期間と合致した償却ルールにし、3)残った商品は全く違うテクノロジーで販売する。
こうした「売りきる努力」をするためには、SPA(製造小売)とは名ばかりで、仕入れと販売を分けている今のアパレルのモデルでは無理だ。仕入れた人間は責任を持って仕入れたものを売るという組織設計にしなければこうした発想は難しいだろう。
二次流通は、二次流通だから楽しいという気分を演出しなければならず、チャネル製作からブランド製作まで分離が必要だ。チャネル戦略で言えば、最も初期段階のマルチチャネルで全く違う見え方にして二次流通を市場を作り上げる必要がある。
「OMO(オンラインとオフラインの融合)で」、などと流行語に踊らされ、新製品とリンクするビジネスモデルを作れば、消費者は必然的に売変(売価変更)を待つことになり、二次流通政策は失敗する。全く別の組織を作り、消費者起点で他社の商品でも買い上げるぐらいの発想が必要だ。
早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!
アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]
![河合拓のアパレル改造論2021](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/02/apparelremodeling2021_main-noresize.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=63297c09c0b1457c7908f9680785a5b7)
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2024-06-29ファストリ12 兆円越え!上場小売業時価総額&ROA ランキング2024
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2023-11-07いまや日本ブランドを超越!国潮ブームでも「ユニクロ」だけ中国で好調な理由とは
- 2023-11-14GMS衣料のジレンマと真実!イトーヨーカ堂アパレル完全撤退の必然とは
- 2024-01-09ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
関連記事ランキング
- 2024-06-25「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-07-02日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは
- 2024-06-04定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
- 2024-07-09あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム
- 2023-01-06SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-24業態別 主要店舗月次実績=2024年5月度
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは