アマゾンの顧客リーチ拡大(オムニチャネル)戦略(1)

2014/11/19 00:00
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 アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長:以下、アマゾン)の2013年度の売上高は76億ドル(約7600億円)、品揃えは1億アイテムに上る。創業わずか13年で日本の小売業売上高トップ10入りを果たす企業規模に到達し、1兆円も視野に入ってきた。

 

 最近とくに凄さを実感させられるのは、あの手この手を駆使した同社の顧客リーチ拡大戦略だ。なかでも顧客属性別の【ライフステージ】プログラムは、どの企業も追いつけないような進化を見せつけている。

 

 たとえば、【学生(=スチューデント)】だ。アマゾンは、彼らに向けて「アマゾン スチューデント」というサービスを提供している。

 主に大学生を対象にしており、通常、年会費3900円で①お急ぎ便や日時指定配送が無料で使い放題、②Kindleオーナーならライブラリー対象本が毎月1冊無料、③対象地域なら自宅以外へも全国無料で配送などの「アマゾン プライム会員」サービスを同1900円で受けることができる(最初の6か月間は無料)。

 しかも、アマゾン・ドットコムが販売する約1000万点の書籍は10%オフだ(コミック、雑誌を除く)。

 ねらいは、若いうちからアマゾン・ドットコムを選んでもらうこと。サイト上では、大学別「アマゾン スチューデント」新規加入ランキングを紹介。2014年11月18日時点では、1位早稲田大学、2位東京大学、3位慶應義塾大学、4位放送大学、5位京都大学、6位日本大学、7位大阪大学、8位筑波大学、9位立命館大学、10位法政大学、11位東北大学、12位中央大学、13位明治大学、14位同志社大学、15位九州大学、16位東京工業大学、17位名古屋大学、18位東京理科大学、19位立教大学、20位関西大学となっている。

 

 2つめは【ベビーのいる世帯】である。ここに対しては「アマゾン ファミリー」というサービスを提供する。

 対象は、妊婦、赤ちゃんのいるパパやママ。子育てをサポートするサービスであり、「アマゾン プライム」会費が最初の30日間は無料。その後、年会費3900円を徴収するけれども、その際に5000円以上のベビー用品の買い物に使える3900円のクーポン券を支給するので実質、「アマゾン プライム」のサービスが無料で受けられる。

 しかも、「ベビー用おむつ」と「おしりふき」は、アマゾン定期お得便経由で表示価格からさらに15%オフで購入できる。「アマゾン ファミリー」会員だけが参加できる特別セールや割引キャンペーンに参加できる特典もある。

 顧客創造は、すべての事業者の最大のテーマであることは周知のとおりだ。これを【ライフステージ】という単純かつ明快、でもあまり気づかれていない切り口で実践するアマゾンは、競合企業にとっては本当に怖い存在と言える。

 

 さらに米国限定ではあるが、アマゾンは、【結婚する人】にも同様のサービスを提供し始めたという。「アマゾン ウェディング」は、婚前、結婚式、その後のステージをすべてサポートする。詳細は不明だが、日本にも早晩上陸する可能性が高い。

 

(明日に続く)
 

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