際コーポレーション中島武社長に遭遇

2012/02/27 00:00
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 この土曜日の夜――。

 出張帰りの荻窪駅前でたまたま立ち寄った中華料理店「紅虎」。案内されるがままにカウンター席に着くと、厨房の中にはでっぷりとした強面の偉丈夫の姿があり、従業員に忙しそうに指示を出していた。

 

「さて、どこかでみた顔だな?」と記憶回路を辿ってみれば、際コーポレーション(東京都)の中島武社長だった。

 

 私が入ったのは、2月23日にオープンしたばかりの『餃子・麺・飯 紅虎 荻窪店』。1階12席、2階30席の店舗で25日は結構な人でにぎわっていた。

 

 別に中島さんと面識があるわけではないので、一般の客として羽根餃子7本の定食(900円)とポテトサラダ(450円)をオーダー。料理が出てくるまでは、オープンキッチンの中の中島さんを観察していた。7人ほどの従業員が所狭しと働く中で巨漢を効率良く動かし、実際に自分でつくり、味見して、率先垂範指示を出す中島さんの姿があった。

 

 連結売上高254億円、従業員数1186人、KIWAグループとして353店舗を展開する企業のトップが中小企業のオヤジのように働き回っている姿は、なかなかの感激ものだ。

 

 料理が出され、食べていると、中島さんがカウンターごしに声を掛けてきた。極力、お客と会話するのが中島流らしい。
「量は多いけど、おいしいでしょ?」。

 私は、「ええ」と答えると同時に、以前読んだことがある、中島さんの著作『ハングリー』(講談社刊:2004年)が面白かったことを伝えた。

 すると中島さんは、興味を持ってくれたようで、「あそこに書いてあることは僕の人生の半分ほど。本当はもっともっとすごいんだよ」とニヤリと笑った。

 

 著作には1948年に福岡県田川郡で生まれた中島さんの生い立ち。拓殖大学に進学し、応援団団長をつとめた後、事業家として成功するもバブル崩壊で辛酸を舐め、際コーポレーションを設立し、悪戦苦闘を繰り返す中で徐々に軌道に乗せてゆく過程が描かれている。

 

 帰宅後に『ハングリー』を読み返してみた。

「起業していちばん大切なのは、続けていくこと、持続力なのだ。その強い持続力を支えるのは強い精神力。一度や二度の失敗でくじけたり、あるいはほんの少し成功したとたんに、もう勝負が怖くなって、それまで成功した分をカネやヒマや豪邸に換えて、わずかな勝利の味をあじわう経営者をよく見かける。それはそれでひとつの人生だし私がとやかく言うことではないだろう。しかし、せっかくつかんだ成功の端緒を人に譲り簡単に勝負から降りるようでは、運は逃げるし、必死でつかんだ勝利は束の間の夢で終わるのではないだろうか」。

 

 たとえ254億円を売り上げても、日本マクドナルド(東京都/原田泳幸CEO〈最高経営責任者〉)から見ればハナクソみたいなもの。そのマクドナルドもトヨタ自動車(愛知県/豊田章男社長)からみればちっぽけな存在、という考えが中島さんにはある。

 

 成功したと現状に慢心せず、厨房で油まみれになりながら働いている中島さんの姿に際コーポレーションのさらなる可能性を感じる。
 

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