それが地方紙の生き残る道

2010/03/09 00:00
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 新聞社の経営を支えているのは、購読収入と広告収入の2本柱だ。

 しかし、近年、若者の新聞離れやインターネット広告の台頭などもあり、新聞社の財政状況はあまり芳しくない。

 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞の全国5紙の発行部数はダウントレンドにあると言われているし、都道府県に根を張る地方紙も元気がないと聞いていた。

 

 確かにインターネットと正面から対決せざるを得ない全国5紙は、大きな岐路に立たされていると言えるだろう。日本全国民を対象にした政治・経済・国際・社会・スポーツニュースは内容的に同質化せざるをえないようなところがあるからだ。また、日本の記者クラブ制度も紙面の同質化を押し進める役割を果たしている。

 

 ところが、先週末、取材のため、福岡県小倉市に出張した折に購入した「西日本新聞」には、地元読者を対象にしたおもしろい記事が満載だった。

 たとえば、「スポーツFUKUOKA」のコーナーでは、紙面の半分を割いて、2月下旬にあった「柔道」「卓球」「テニス」「バドミントン」「ゴルフ」「ボウリング」「グラウンドゴルフ」などの大会結果を公募で集め、掲載している。小さな大会の参加者にとってはどれほど励みになり、うれしいことだろう。

 地域版は2面で展開。人物レポートを多く掲載していることが特徴で訃報欄の充実はもちろん、小さな子供の誕生日欄もあり、顔入りで祖父母の名前を入れて紹介している。親族縁者にとっては新聞紙が一生の宝物になることだろう。

 

 もはや全国民をターゲットにしたニュースは、ユビキタス状態でどこでも入手可能だ。

 しかしながら、地域ならではのこうした情報は、地域外の方にとっては関心事ではないけれども、地元の人間にとっては大きな意味合いがある。

 ただ、その「西日本新聞」(3月7日)でさえも、全36面中2.5面を地域ニュースに割いているに過ぎず、今後には課題を残している。とはいえ、その深耕はファンづくりの強力な武器になるに違いない。

 地域情報をしっかり拾い上げ、地方紙にしかできない情報を提供することにこそ地方紙の存在意義がある。

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