アフターコロナ ネットスーパーとクイックコマースが成長、収益化のためにすべきこととは

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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ネットスーパー

ネットスーパーの利用シーンは多様化

 朝は4歳の子供を保育園に送ってから出社。職場では会議や打ち合わせに出席しながら自分の業務を進め、気づいたらもう夕方。保育時間に間に合うように急いで子供を迎えに行き、帰宅したタイミングで前日にネットスーパーで注文しておいた商品を受け取り、その食材を使って夕食の準備に取り掛かる──。

 これは日々を忙しく過ごしている、子育て奮闘中の30代共働き世帯のとある1日だ。ネットスーパーは、このような多忙な若いファミリー層を中心に利用が広がっている。さらにコロナ禍では、感染防止の観点からお店でほかのお客や従業員とあまり接触したくない、あるいは在宅時間が増え、商品を受け取りやすくなったなどの理由から、需要が急激に伸びた。そのほか、「足を痛めてしまった」「免許を返納して移動手段がない」「寒くて外に出たくない」「離れて暮らす両親に食材を差し入れたい」など、ネットスーパーの利用シーンは多様化している。

ネットスーパーのイメージ
ネットスーパーは、多忙な若いファミリー層を中心に利用が広がっている。(i-stock/milindri)

 コロナ禍でネットスーパーと同じく急速にニーズが拡大しているのがクイックコマースだ。IT系のスタートアップ企業が自前のダークストアを開設するほか、スーパーマーケット(SM)との協業により運営しているケースが多い。展開エリアは現在、大都市圏の一部に限られているものの、注文から15分~1時間程度と、すぐに商品が届くこのサービスはデジタルへの感度が高い若年層を中心に利用者を増やしている。

 ネットスーパーとクイックコマースは同じ食品宅配サービスとして混同されがちだが、その使われ方はやや異なる。ネットスーパーは計画購買型で比較的まとめ買い傾向が強く、購入金額は5000~1万円程度とボリュームが大きい一方、クイックコマースは「あの食材を買い忘れた」など「すぐに欲しい」というニーズに対応しており、気軽に少額を購入するという使われ方をされる。そのため、必ずしも両者が競合しているとはいえない。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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