デジタル給与に手数料引き下げ…決済の専門家が解説する2023年のキャッシュレストレンドとは

リテールライター:崔順踊
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トレンドワードは「給与デジタル払い」「加盟店手数料引き下げ」

 佐藤氏は2023年のキャッシュレストレンドワードとして「給与デジタル払い」と「加盟店手数料引き下げ」を挙げる。

 1つ目の給与デジタル払いは2023年4月1日から解禁された。元々はフィンテック、とくにモバイル決済事業者の決済およびキャッシュレスの拡大が大きな目的である。そのためPayPayや楽天ペイ、リクルートなど、手を挙げた事業者が認可を受けてサービスインするのは2023年後半または2024年初頭あたりになるとみられている。「これが実現すると、全額ではなくとも多くの人々が給与の一部をモバイル決済事業者に振り込むことを選択するようになり、キャッシュレスが進展するはずだ」(佐藤氏)。

 これまでは、銀行からの送金などチャージにかかるコストをモバイル決済事業者が全て負担しており、多くのコストがかかっていた。給与デジタル払いでは、銀行を介さずに決済事業者にマネーが直接振り込まれるため、決済手数料・加盟店手数料を安くすることができ、事業者にとっては大幅なコスト削減が期待される。さらにモバイル決済事業者は取引拡大のためにさまざまな特典を提示することが予測され、一層のキャッシュレス決済の拡大が見込まれる。

 二つ目が加盟店手数料の下げ圧力が強まるという点だ。2022年11月に公正取引委員会が「VISA」「Mastercard」「UnionPay」のインターチェンジフィー(カードが使用される取引を受け入れるため、銀行間で支払われる手数料)を公開した。「政府や公取のこのような取組みや、情報公開による手数料への認識などが加盟店手数料の下げ圧力の動きとして少しずつ出てくるだろう」(佐藤氏)というのだ。

 既存の収益源が減少することになれば、国際ブランドは加盟店手数料に依存しないビジネスモデルへの転換が必要となる。「月額課金の予約受付サービス、従業員管理・勤怠管理・給与計算などの付加価値サービスなど、国際ブランドは今後、「決済プラスアルファ」のサービスで儲けていくかたちになるだろう」(佐藤氏)。

 実際に米国ではBlock(ブロック:旧スクエア)やToast(トースト)などの企業が前述の付加価値のサービスを積極的に提案し、収益をあげている。現在は加盟店手数料への収益依存が大きいが、加盟店手数料はいずれ下がるため、ビジネスモデルをシフトしていく必要がある。「米国以外にもヨーロッパやオーストラリアでは加盟店手数料が政府主導のもと限りなくゼロに近づいており、インドやメキシコでは無料となっている。これらの国ではリアルタイム決済ネットワークがあるため、実現可能になっているという背景もあるが、日本でも大企業や中堅企業を含め加盟店ももっと声をあげていくべきだ」と佐藤氏は述べる。

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