小売業とメーカー、個人 それぞれに適したライブコマースのやり方とは

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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②メーカーとライブコマース

 メーカーがライブコマースを行う大きなメリットとして、商品のこだわりや特徴などをWEB上で時間をかけてしっかり丁寧に説明できるという点が挙げられます。

 ECページやブランドページを作る上で、こだわりの商品であればあるほどその魅力を十分に伝えるためには多くの情報を網羅する必要があります。しかし、文章ベースであまりにも長い説明を羅列してしまうと、どうしてもパッと見た瞬間の情報量の多さから一定数の離脱を招いてしまいます。しかし、ライブコマースであれば30分~1時間といった長時間でもエンタメを織り交ぜることでしっかりと語ることができるため、伝えられる情報量は圧倒的にライブコマースの方が充実させることができます。

図3メーカーライブコマースの特徴
図兵3メーカーライブコマースの特徴

 また、商品を作った開発者や研究者などが一緒に出演して、専門家として商品開発に苦労したポイントなどを伝えることも有効です。例えば、成分のこだわりや競合商品を見ながらの差別化ポイントなどを伝えられると、従来のWEB接客を超えた効果的な商品説明も可能になります。メーカーにとってはしっかりと商品説明を行えるブランディングの場としてライブコマースを活用することができるのです。

 このように、小売やメーカーは芸能人やインフルエンサーのような『集客力のある人』に頼らずとも、『きちんと説明ができる人』さえいれば、コンテンツ次第でライブコマースをビジネスとして価値あるものにすることが可能なのです。

③個人プレイヤーとライブコマース

 個人のライブコマースプレイヤーは、その人にファンが付いていることが多いため、ファンが応援するかたちで買ってくれるケースが非常に多く、YouTuberやインフルエンサーの方がライブコマースを行うのは、お客様との関係性が深い点からも有利に働きます。

 個人の場合、広告収入や企業案件、投げ銭などの収益源もありますが、ここに物販という課金モデルが1つ増えるため、フォロワーが多い方にとっては大きな収益に繋げることも可能です。ただし、フォロワーが少ないとスタートが非常に厳しいため、集客の心配がないPeace You Liveなどの専用アプリで始めるのが初心者の方にはおすすめです。

 同じように、現状でフォロワーが少ないメーカーや小売企業にとっては、フォロワーの多いインフルエンサーを活用するか、集客力のある専門アプリでライブコマースを行うことで、販売だけでなく商品の認知向上やブランディングなどに繋げることも可能です。

 このように、小売であれば場所という強みを生かしたWEB接客ツールとして、メーカーであれば強力なブランディングの場として、個人であればファンからの応援購入として活用することでライブコマースの強みを引き出すことができます。ただし、もしこの相性を間違えた配信をしてしまうと、お客様とのコミュニケーションに齟齬が生じてしまうため、しっかりと意識し、分けて考えることが重要です。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。
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