出店で売上5倍に!中川政七商店、工芸メーカー向けECモールの仕組みとは

笹間聖子
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工芸を買い、使う人口を増やす

信楽焼のたぬきの置物
明山窯 手のひらサイズの信楽焼のたぬきの置物「SHIGA★LUCKY」

 ひるがえって、ビジョンの実現以外で中川政七商店側が享受するメリットはあるのか。「出店手数料や卸値と売値の利幅からの収益で、ビジネスとして成り立っている」と中武氏。加えて、メーカーの商品の購入者がオリジナル商品を“ついで買い”するなど、自社の新しい顧客開拓の入り口の一つになることも見込んでいる。

 ただそれを差し引いても、通常のECモール以上に、手厚いケアや集客へのコミットが求められる。そこは短期的ではなく、「工芸を買い、使う人口を増やす」という中長期的な利益を目指しているという。

 一方で課題もある。直近の悩みとしては、参画するブランドをいかに探して拡張するかだ。2026年までに40ブランドを追加することを目標に掲げるが、既存のブランドとのカテゴリの競合や産地の重なりなど、バランスをとっていかなければならない。出店希望の問い合わせも増えているが、道のりは長い。また、今後の展開として視野に入れる、ポップアップストアの出店、職人、産地と顧客との交流イベントの開催に向けてもアクションが必要だ。

中川政七商店EC担当
さんち商店街 ディレクターの中武直美氏

 最後に中武氏は、「明山窯の商品では先日、1カ月以上持つだろうと判断して仕入れた手のひらサイズのたぬきの置物が、3日で売り切れてしまった。世の中には、今は発見されていないけれど、全国の人が欲しいと思える魅力的な商品がまだまだある。それを誰かの目に触れる場所に置く役割を果たしていきたい」と力強く語った。

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