「前始末」のすすめ

2012/09/19 00:00
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 イトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)の創業者である伊藤雅俊さんの言葉に「前始末」というのがある。事前準備と段取りを徹底することを意味している。「失敗のあと始末とは別に、失敗しないための前始末というのも大事ではないかと思います。失敗を極度に恐れる必要はありませんが、失敗せずにことが運ぶにこしたことはないからです」(『商いの心くばり』:講談社刊)。

 

 『チェーンストアエイジ』誌編集部では「冷蔵庫理論」と称して、「前始末」の徹底を推奨している。これは、帰宅後に冷えたおいしいビールが飲みたければ、出勤前に冷蔵庫に入れればいい、という単純なものだ。企画、執筆依頼、アポ取り、取材、執筆…すべて前倒しでこなせば、締め切り前にあたふたすることはないし、ミスも防げる、事態の急変にも対応できる、などいいことづくめだ。

 

 そして、秋の風音が聞こえてくると、流通業界でも《予約販売》という名の「前始末」商法が始まる。「ボジョレーヌーボー」「クリスマスケーキ」「おせち料理」「年賀状印刷」…。これらにしても、競合他社に先行できるだけでなく、閑散期の工場利用でコストを減らし、需要予測の精度アップで廃棄削減にもつながるなど相当なメリットがある。先手必勝。「前始末」恐るべし、である。

 

『チェーンストアエイジ』誌2012年10月1日号
 

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