【経済】アングル:米中貿易摩擦「休戦」、人民元下げ圧力も緩和か

2018/12/20 11:37
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米中貿易摩擦
12月18日、米中貿易摩擦がひとまず「休戦」となったことで、人民元の下げ圧力もある程度和らいだように見える。写真は人民元とドルの紙幣。シンガポールで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

 

[上海 18日 ロイター] – 米中貿易摩擦がひとまず「休戦」となったことで、人民元の下げ圧力もある程度和らいだように見える──。少なくともこれがオフショア人民元デリバティブ市場が発しているシグナルで、背景には資金流出リスクの低下やオフショア人民元調達コストの下落がある。

 

 今年に入って米中貿易摩擦などが人民元売りを活発化させ、対ドル相場は3月終盤の高値から11月末までに10%強も下落した。

 

 しかしスポットレートと特定期間のフォワードのスプレッドを表すフォワードポイントは、両国が関税引き上げの凍結などに合意した今月初めから、人民元売り圧力が緩和し始めたことを示している。

 

 17日には1年物ドル/オフショア人民元(CNH)フォワードポイントは一時115ポイントと、2011年11月以降の最低水準を記録。18日の取引でも135ポイントと、7年ぶりの低さで推移した。

 

 トレーダーは、こうしたフォワードポイント低下の原因をオフショア人民元市場で資金が調達しやすくなったためだとみている。一部の短期金利はマイナス圏にまで突入。オフショア人民元のインプライド翌日物預金金利は18日午前にマイナス1.999%まで下がる場面があった。前日引け値はプラス0.742%だった。

 

 また米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止めが近いとの観測も影響している。

 

 今年はFRBが利上げを続けてきたことが、人民元にとって最も大きな下げ材料となった。米中の金利差縮小で人民元建て資産の魅力が弱まり、資金流出リスクを高めたからだ。

 

 ただ18─19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、追加利上げが決まる見通しだが、同時に世界経済成長に対するリスクの増大を受け、引き締めサイクルを休止する可能性も否定できなくなっている。

 

 中国は景気てこ入れのために金融緩和を進めるとみられている中で、米国の利上げが打ち止めとなれば、人民元に対する売り圧力がある程度後退してもおかしくない。

 

 OANDA(シンガポール)のアジア太平洋トレーディング責任者スティーブン・イネス氏は「来年末段階で、トレーダーはFRBの利上げ確率を完全にゼロとみている」と話した。

 

 みずほ銀行のシニア・アジアFXストラテジスト、ケン・チャン氏は、米中貿易摩擦が和らいで人民元の地合いが安定した結果、フォワードポイントが下がったと指摘。中国人民銀行(中央銀行)は当面、人民元相場防衛のためにオフショア人民元の流動性調節を使う公算は乏しいとの見通しを示した。

 

 人民銀はこれまで、オフショア人民元の流動性を引き締める目的で、香港における借入金利を高めに誘導し、投機筋が人民元を売り持ちにするコストを押し上げる政策を実施していた。

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