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2017年9月7日

ダイヤモンド・リテイルメディア・フォーラム2017開催レポート
IoT・AIで進化する小売業の成長戦略ビジョン
パーソナライゼーションで「顧客体験価値」向上を実現

【特別講演】

「IoT・AI時代のデジタルイノベーション戦略事例」

~リテールテクノロジーカンパニーを目指して~


株式会社トライアルホールディングス
取締役副会長 グループCIO
西川 晋二 氏

 

 米国ウォルマートをモデルに、日本型スーパーセンターを全国で展開するトライアルホールディングス。もともとIT企業だったこともあり、流通業として創業したときからIT活用に積極的に取り組んでいる。新しいデジタルマーケティング手法による効果的な販促やタブレットカートの開発による実験などの挑戦を次々と行っている。ITの活用により、効率化を推進してきたこれまでの取り組みと、今後のIoT・AIを活用した小売業のデジタルイノベーション戦略について紹介する。

 

デジタルマーケティングを活用した独自の戦略

株式会社トライアルホールディングス
取締役副会長 グループCIO
西川 晋二 氏

 トライアルの主力フォーマットとは、「Walmartに学んだ、日本型スーパーセンター」である。現在は、日本全国に201店舗(2017年8月現在)を展開しており、年商3510億円。中期5~6年で1兆円を目指している。トライアルの出自はIT企業であったことから、デジタルマーケティング戦略を柱としている。寡占化とITにより、効率化を図り、商品フォーマットと地域ドミナント化を推進。トライアルは、「ITの力で流通を変える」をテーマに事業を拡大している。

 

 ITの力で流通の効率化を図る4つの柱がある。「従業員専用モバイル端末 PACER」「アクティブ会員500万人のポイントカード」「日本・中国における300名の開発体制」「自社開発、データ処理・分析・自動発注基盤 e3SMART」である。このなかで、データ活用基盤となっているのが「e3SMART」だ。2007年からの10年分のID-POSデータであり、100億件の自社保有のデータベースとなっている。

 

 このデータの活用は、商品メーカーとの協同で、カテゴリーマネージメントとして利用。トライアルが標榜するカテゴリーマネージメントは、「カテゴリーSBU(戦略的ビジネスユニット)としてマネジメントしていくことである。トライアルでは、Walmartのリテールリンクに倣い、 MD-Link を公開。カテゴリーキャプテンとトライアルとがお客様の求める、より良い品揃えを 実現し、売上と収益の改善を行う協働の取り組みを行っている。役割分担は、「餅は餅屋」にならい、トライアルは面の確保とローコスト運営という販売力強化を担い、クラスター企業(カテゴリーキャプテン)は豊富な品揃えとお得な商品という商品力強化を担っている。その実現のために、トライアルのさまざまなデータをメーカーに公開している。

 

メーカーに公開している分析機能の活用事例とは

 MD-Linkの公開契約をしている協働メーカーは230社。この企業と分析機能を活用したデータを共有している。そのなかの例として、ビールの併売事例を紹介する。プレミアムビールを購入した顧客は、おしゃれな洋風つまみを購入している。新ジャンルでは、刺身の購入が多く、機能性発泡酒では、健康系のつまみ購入が多いという結果が得られた。売上と購入頻度を表したバブルチャートは、個店別やエリア別で表記することができる。これも、店舗やエリアによって、売上などに違いが出ていることがある。データで確認できることで、効果的な商品販売戦略が立案できる。

 

 出店戦略にも先進的なWeb GISというデジタルデータを活用している。地図上に、売上、会員数、来店会員数、会員化率をビジュアル化できるものだ。エリアの詳細分析結果の表示も可能。円商圏やドライブ商圏、売上シェア商圏も表示できる。さらに、複数店舗(~5店舗)の同時表示まで可能である。販売戦略も、出店計画も、データの裏付けがある、効果的で効率的な実施が可能となっている。

商品の販売動向をわかりやすく表示する「バブルチャート」
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新たな戦略「リテールメディア」に挑戦開始

 リテールメディアとは、店舗や売場そのものを顧客とつながるメディアととらえ、あらゆる接点を通じて顧客とコミュニケーションを図るというもの。新たなメディアとして構築を開始している。

 

 一般的に、リテールメディアとして位置付けられるものとして、「店頭端末(KIOSK端末)」「タブレット付カート」「レジエンドメディア」「レシートクーポン」などが考えられる。また店舗外で、お客様とつながる手段としては、「スマホ」「タブレット」「TV」があげられる。

 

 このなかでトライアルが注力しているのが「レシートクーポン」である。ピンポイントマーケティング(PPM)とよぶ販促である。従来型のバラマキ型のクーポンサービスではなく、特定の顧客向けのコスト効率のよいクーポンサービスである。この実験として行われたのが、男性用カミソリの替え刃のプロモーション。「カミソリを購入したユーザー」「男性化粧品を購入したユーザー」「オーラルケア用品を購入したユーザー」と、替え刃を購入する可能性が高そうな対象者約110万人を抽出し、約62万枚のクーポンを発行。結果は、クーポン対象者全体の1.4%である約8500人がクーポンを利用して替え刃を購入した。

トライアルが新たなメディアとして構築した「リテールメディア」
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タブレットカートの実験的導入と今後の展望

 レシートクーポンは、買物の後の精算時に発券するため、次回の買物時には忘れられて利用されないことが多かった。買物中にお客様に訴求できれば、もっと高い効果を得ることができる。高齢者など、アプリ使用が難しい層がいることもあり、誰もが使用しやすいリテールメディアとして「タブレットカート」を開発した。また、買物は計画購入というよりも、店頭で決まることが圧倒的である事実もこの施策の効果を高めている。

 

 タブレットカートは、ポイントカードでログイン。店内にはタブレットカートを認識するビーコンが設置されており、特定の売場に近づくとタブレット端末に商品クーポン情報が表示される。その結果、タブレットカート利用者の買上点数は、昨年対比で20%アップし、カート非利用者と比べ50%アップという効果が出ている。

 

 今後のタブレットカートの展開としては、POSレジ機能である。商品バーコードを読み取るスキャナーをタブレットに搭載し、タブレットカートでの決済までできるようにする。

 

 また、スマホアプリを開発することで、売上アップと同時に、販促コストとレジコストの削減も視野にいれている。米国の無人レジ店舗「Amazon Go」に刺激を受けた訳ではないが、IT活用によって無人店舗の実験準備を進めている。年内には「トライアル Go」(仮称)の実験を始める計画だ。

 

 リテールテクノロジーカンパニーとして、「流通情報革命」をあらゆる角度、側面から挑戦していくことが、トライアルの使命と認識し、今後も、協力企業とともに挑戦を続けていく。

 

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