「おうち居酒屋」ブームも継続、食中酒提案で楽しく豊かな家飲み時間を創出

ライター:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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エンド展開やクロスMDで
目的買い以外の来店客に訴求

 これまでは食事に合わせる酒類というとビール類やワインが定番だったが、食生活の変化やライフスタイルの多様化に伴い、ユーザーに選ばれる酒類も変化しつつある。

 現在、最も勢いがあるのが「RTD」だろう。サントリー「-196℃ストロングゼロ」を中心に多くのユーザーを獲得した高アルコール系をはじめ、フルーティーで果実味のある果汁系、若年層でも受け入れやすい低アルコール系、ウイスキーのエントリーにも貢献したハイボール缶など、さまざまなフレーバーで売場を盛り上げてきた。また外食での飲用体験から、「こだわり酒場のレモンサワー」をはじめとしたレモンサワーがブームとなり、メーカー各社がさまざまな商品を発売したことも記憶に新しい。

 直近では、キリンビールの「キリン 氷結 無糖」シリーズや、サントリー「-196℃ 瞬間凍結」といった食事に合わせやすい無糖系が人気を集めている。

 食中酒の定番であるビールは酒税改正以降、新ジャンルなど他のビール類からの流入もあり、堅調に推移するカテゴリーのひとつ。「生ジョッキ缶」が好調のアサヒビールではフルオープン缶を採用した初のプレミアムビール「アサヒ食彩」を3月より全業態で展開する。

 ビールやRTDへの流入が続きマイナス基調の新ジャンルや発泡酒だが、昨今の健康意識の高まりもあり、機能系と呼ばれる糖質オフ・ゼロ系ビール類の動きは比較的好調だ。キリンビールでは「プリン体0」「糖質0」の機能を持つ「淡麗プラチナダブル」を含む「淡麗」ブランドを対象にご当地グルメが当たるキャンペーンを実施し、食事との相性のよさを訴求している。

 コロナ禍以降、テレワークの推進なども後押しし、家でゆっくりとお酒を楽しむ余裕ができたことから瓶物の酒類も動きやすくなっている。たとえば日本酒は純米大吟醸や山田錦使用など付加価値型商品の動きがよく、メーカー各社は和食だけでなく洋食にも合わせやすいタイプ、低アルコールや微発泡タイプ、果汁と合わせた日本酒ベースのリキュールなど、ふだん日本酒を飲まない入門層をターゲットとした商品の開発にも力を入れている。

 ウイスキーも好調なカテゴリーのひとつ。サントリーでは外飲みおよびRTDのハイボール缶によるハイボール体験を通じ市場の裾野拡大に貢献。バカルディジャパンの「デュワーズ」はダブルエイジ製法によるスムースな味わいで若年層の人気を集めている。

ウイスキーのイメージ
テレワークの推進なども後押しし、家でゆっくりとお酒を楽しむ余裕ができたことから瓶物の酒類も動きやすくなっている(写真はイメージ)

 食と酒類を絡めた食中酒の提案は、食品の品揃えが豊富なスーパーマーケット業態が最も得意とする分野だ。ただし、酒類は主通路から一歩入った定番棚で展開されていることが多く、目的買い以外の来店客に気付きを与えるための仕掛けが必要になる。エンド展開や総菜とのクロスMDなど店頭露出を増やすことで気付きを与え、家飲みの楽しさを伝えることでトライアルを促進していきたい。

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