これからの「鍋」シーズンを前に、鍋の喫食人数の変化を探る=MD EDITION
共働き世帯の増加や、食卓の個食化、鍋つゆ商品ラインアップの充実などを背景に、家庭内で出現する鍋の喫食人数に変化が起きている。そこで今回は家庭の食卓を継続的に観察してきた食MAPデータから、家庭内で「1人で食べた鍋」にスポットをあて食卓傾向を探っていく。
大人の1人鍋
家庭内で出現した鍋メニューのうち、1人で食べた鍋の割合は経年で増加傾向となり、2010年度(10~2月)の9.1%から2019年度(10~2月)の14.1%と5ポイント増加した。【図表❶】また、食MAP®によると、2019年度(10~2月)において1人で鍋を食べた割合を個人属性別に見た場合、最も多いのが主婦の7.9%で、次いで主人の6.3%となることもわかっている。一方で高校生以下の子供(乳幼児を除く)は0.9%となり、大人が中心であることが推測できる。「1人鍋」は調理が簡単で、家族の好みなどの影響もないため大人の個食需要にマッチしていることが考えられそうだ。
「1人鍋」は惣菜やピリ辛
「1人で食べた鍋」の材料使用率を見ると、鍋全体と比べ、鍋つゆや豚肉の切り落とし・こま切れなどの手軽な素材が増加するほか、惣菜のキムチ鍋・チゲや惣菜のその他の鍋などの使用率も高く「簡便」がキーワードとなりそうだ。また、キムチ・カクテキやコチュジャンなどの“辛い”味付けも「1人で食べた鍋」における使用率が高い。年齢の低い子供などがいる世帯では出しづらい鍋も1人だと気にしないで食べられる点が影響しているのかもしれない。一方で、長ねぎ、白菜、大根、にんじん、えのきだけなどのいわゆる「定番食材」となる生鮮野菜や、濃口醤油、ポン酢・味ポン・ゆずポン等の調味料などは「1人で食べた鍋」における材料使用率が鍋全体と比べ低い。【図表❷】食MAP®で「生鮮・生鮮加工品」の平均使用食材数を見ても、「1人で食べた鍋」は4.4となり、鍋全体の6.4と比べ約2食材少ないことがわかっており、なるべく少ない食材で自分好みの鍋を調理している様子がうかがえる。
2020年9月時点における家庭内喫食率は、昨年と比べ高い水準を依然として維持している。今年の鍋シーズンはコロナ禍ということもあり、家庭内で食事をする機会が例年と比べ増加することが考えられる。一方で、大人数で1つの鍋を囲むことに抵抗を感じるケースもあるかもしれない。これから到来する鍋シーズンにあたり、食卓における鍋関連の動向をいち早くキャッチすることが企画・提案強化のカギとなりそうだ。
食MAP®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが提供するマーケティング情報システム。1998年10月から首都圏30km圏内在住の主婦世帯を対象に、食品の購買、調理、消費までをパネル形式で調査したもの。
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