焦点:中国スマホ市場「高級化」、国内勢躍進でアップルに陰り

ロイター
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3月22日、中国のスマートフォン小売店が、昨今の販売不振を嘆いている。北京で2月に行われたシャオミの発表会で主力機種「Mi9」を紹介する創業者のレイ・ジュン氏(2019年 ロイター/Jason Lee)

Josh Horwitz

[上海 22日 ロイター] – 中国のスマートフォン小売店が、昨今の販売不振を嘆いている。中国経済に冷気が吹き寄せ、消費者が買い替えに及び腰になっているからだ。

それにもかかわらず、華為技術(ファーウェイ)に代表される国内ブランドは、高級志向を強めて500─800ドル(約5万5000─8万8000円)の価格帯にシフトし、最先端のハードウェアと画期的な機能を消費者に訴求することで、売上を大きく伸ばしている。

その結果、米アップルの市場占有率が重要な製品価格帯で低下し、小売店が改めてiPhone(アイフォーン)の値引きに走っている。

「買い替え客のなかで、アップルから中国ブランドに乗り換える人は多いが、その逆は非常に少ない」と語るのは、北部の山東省で小米集団(シャオミ・コーポレーション)ブランドのショップを経営するニン・ジアンさん。

ファーウェイやシャオミ、「OPPO(オッポ)」や「Vivo(ビボ)」といった中国ブランドは、かつては割安感のある端末で世界最大規模の中国スマートフォン市場でシェアを奪おうとしていたが、より高性能の端末を求める消費需要を前にして戦略を練り直した。

OPPOのグローバル副社長を務めるアレン・ウー氏はロイターに対し、「人々はこれまでよりスマートフォンにこだわるようになっており、機能や使い勝手に対する期待も高まっている。対応として、ハードウェアのスペックを絶えずアップグレードしてきた」と語った。

中古携帯電話の買取・再販ショップである回収宝のファン・ヘ最高経営責任者(CEO)は、消費者はアップルからファーウェイへと移行しつつあると証言する。中国の消費者は自撮り(セルフィー)が好きで、カメラの品質を重視する傾向であることが背景にあるという。ファーウェイは2016年以来、独高級カメラメーカーのライカと提携している。

「ファーウェイの端末が搭載するカメラは、アップルのものよりも目に見えて良くなっており、中国の消費者の嗜好(しこう)に合っている」と彼は言う。

たいていのスマートフォンはデュアルカメラ構成だが、ファーウェイの端末「P20 Pro」は背面カメラを3台搭載しており、そのうち1台はズーム機能に優れている。

「P20 Pro」は、ファーウェイの「P20」及び「メイト20」シリーズを構成する新型端末の1つだ。調査会社カウンターポイントのデータによれば、両シリーズの貢献により、中国市場における500─800ドルの価格帯の製品において、ファーウェイのシェアは昨年、8.8%から26.6%へと急上昇した。

対照的にアップルの同価格帯でのシェアは、81.2%から54.6%へと急落している。これには、「iPhone X」によってさらに高級志向を強めた決断が影響している。

カウンターポイントで調査担当ディレクターを務めるニール・シャー氏は、「中国人スマートフォン購入者の大半には、携帯電話1台に1000ドル以上をポンと出す用意はない」と言う。「(iPhoneXが1000ドル以上の価格帯に移行したことで)800ドル以下の価格帯に空白が生まれた。これを中国メーカーが鷲づかみにした格好だ」

調査会社カナリスのデータによれば、中国における600ドル以上の携帯電話の出荷台数は、2018年に10%増大した。対照的に、市場全体は14%縮小しており、2年連続の縮小となっている。

海外市場での躍進

ファーウェイのロゴ。上海で2016年5月に開かれた見本市で撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

中国においてアップルのブランド力に陰りが見えることは、複数の主要小売企業が今月、今年に入って2度目となるiPhoneの値下げに同時に踏み切ったことからも裏付けられる。

小売り大手の蘇寧易購のサイトにおける64GBのiPhone8の販売価格は現在3899元(約6万3000円)で、12月に比べて約25%安くなっている。米国では通常、中国よりも安くiPhoneを購入できるが、その米国での599ドルという価格よりも安くなってしまった。中国ではiPhoneの「8」までの大半の機種が値下げとなっているが、その幅にはばらつきがある。

業績の点でも岐路に差し掛かっているように見える。中華圏におけるアップルの10─12月期の収益は、前年同期比で約4分の1低下した。中華圏は現在、アップルの収益全体の15.6%を占めている。

スマートフォンメーカーとして世界第2位のファーウェイは、2018年の収益が前年比21%増になると予測している。スマートフォン販売の好調が大きく貢献したというのがアナリストらの見解だ。

視野を広げると、アップルの販売台数の減少は、同社のアプリ提供サイト「アップストア」やメディアストリーミングサービスの顧客も減ることを意味している。さらに、中国ブランドの上位機へのシフトは、他国市場におけるこれらのブランドの進出強化も意味する。

カナリスによれば、欧州市場におけるファーウェイの出荷台数は最新の四半期で55%増加しており、市場シェアは現在23.6%である。出荷台数が微減となった韓国サムスン電子やアップルと、もはやそれほど大きな差はない。

OPPOとVIVOも台頭

Oppoのロゴ。上海で2月撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

かつてアップルが中国市場で占めていたシェアのうち最大の部分を奪いつつあるのはファーウェイだが、最新の脅威は、電子機器コングロマリットの歩歩高電子工業(BBK)が抱えるブランド「OPPO」と「Vivo」である。

Vivoは昨年6月に3898元からの価格帯で「ネックス」を発売し、Oppoは同7月に「ファインドX」を4999元で発売した。

これらの機種は両ブランドにとって初の600ドル以上の価格帯となる。中小都市の若者を中心に300─500ドルの機種を販売していた両ブランドのルーツから大きく離れることになる。

これらのデバイスでは、ガラス面に埋め込まれた指紋認証センサーや「ノッチレス」ディスプレイなど、iPhoneにはない特徴が採用されており、いずれも画面サイズの拡大を可能にしている。

シャオミも高級スマホ市場へのシフトを進めており、1月には、低価格シリーズ「レドミ」を分離して下位ブランドとすることを発表した。これは、数年前から低価格機種を「オーナー」ブランドで販売することで製品差別化を図ってきたファーウェイの戦略に倣った動きである。

創業者レイ・ジュン氏は記者団に対し、「レドミ」は国際市場とネットでの販売、主力の「シャオミ」ブランドは中国国内と実店舗での販売をターゲットにすると語った。

シャオミは先月、最新の主力機種「Mi9」を発表し、価格を2999元とした。だが同社は、シャオミの主力機種を3000元以下で発売するのは最後になるだろうとも述べている。

レイ氏は、「シャオミの主力シリーズは、かつては価格を1999元に設定するのが常だった」と言う。「これは我が社の台頭に貢献する要因だったが、さらに成長していくためには障害にもなっていた」

(翻訳:エァクレーレン)

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