百貨店跡地再生に強みのヨドバシカメラ 図表でわかるビックカメラとの都心争奪戦の行方
そごう・西武取得で「2位集団」から脱出か
今回、そごう・西武のターミナル店舗を取得する可能性が高いヨドバシカメラは、売上7530億円(2022年3月実績)と家電量販店業界では第3位の位置につけるが、本案件によって状況は大きく変化する。業界トップのヤマダホールディングスは売上高1兆6000億円超と圧倒的な規模を誇るが、それ以下はビックカメラ(東京都)、ヨドバシカメラ、ケーズホールディングス(茨城県)、エディオン(大阪府)と7000億円台の企業が2位集団を形成している(図表①)。
今回、ヨドバシカメラがそごう・西武の主要店に出店することになれば、数千億円単位の売上を獲得する可能性がある。そうなれば、ヨドバシカメラの売上高は1兆円を越え、2位グループから抜け出すとともに、都市型家電量販店のライバルであるビックカメラを大きく引き離すことができる。そうした意味では、そごう・西武の店舗はヨドバシカメラにとっては魅力的だったことが、両社の店舗配置からもうかがえる。
ヨドバシカメラ VS ビックカメラ
図表②は、そごう・西武の店舗エリアについて、ヨドバシカメラとビックの出店状況を示したものだ。
とくに池袋と渋谷はヨドバシカメラにとって空白地であり、ここを確保できれば日本の3大駅ターミナルである新宿・渋谷・池袋のすべてに出店できることになる。とくに、池袋に関してはビックカメラの本拠地であり、同社の旗艦店もある。ここに大型店を投入することで直接対決し、ビックカメラの売上を奪うことができれば、出店の意義は極めて大きい。
ヨドバシカメラは、百貨店クラスの売場面積に家電量販店を核店舗とした複合商業施設として組成することを得意とする。
たとえば、2019年に開業した「ヨドバシカメラ梅田タワー」内の商業施設「LINKS UMEDA(リンクスウメダ)」は、ヨドバシカメラ部分が3万5600㎡、テナント部分が5万5100㎡、あわせて9万700㎡の売場面積を持つ巨大な複合商業施設で、売上高は1700億円を計画していたという。こうした規模の商業施設を伴った家電量販店という出店形態はヨドバシカメラ以外にはなく、都市型家電量販店のライバルとされるビックカメラも施設開発までやってはいない。
「池袋」駅に隣接した「西武池袋本店」の広い売場を活用して、ヨドバシカメラが得意とするターミナル商業施設として再構築した場合、その集客力は計り知れない。駅から少し離れたビックカメラ本店の売上に大きなダメージを与える可能性は高い。
千葉については、2022年11月にビックカメラの本店より広い大型店がヨドバシカメラの隣にオープンして激戦地となっている。ここも「そごう千葉店」の広い売場を活用した家電核商業施設として反撃に出る可能性が高く、当初から出店候補としても報じられている。横浜に関しては、旧横浜三越跡地の繁盛店、「ヨドバシカメラマルチメディア横浜店」がすでにあるが、店舗規模、賃借ビルであることなどを考えると、条件によっては増床移転の可能性もある。
広島は、「そごう広島店」が商業中心地である紙屋町にあり、バスターミナルと一体化したビルをそごう・西武が所有している。この立地は、ビックカメラも近隣にあるが、そごう広島店のすぐ向かいにあるエディオンの本店が最大のライバルとなる。こちらも条件次第だろうが、インバウンド来訪も多い人口120万人の広島マーケットは直接対決する価値があるように思われる。
流通アナリスト・中井彰人の小売ニュース深読み の新着記事
-
2024/07/04
コロナが明けても安心できない外食大手の経営環境と深刻な課題 -
2024/05/02
イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは? -
2024/04/03
セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは -
2024/01/17
主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは? -
2023/12/25
徹底考察! ドン・キホーテ新業態「ドミセ」出店の真のねらい -
2023/10/12
イオンGMS復活の命運を握る「そよら」、非食品復権のカギはあのホームセンター?
この連載の一覧はこちら [18記事]
![流通アナリスト・中井彰人の小売ニュース深読み](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2023/01/nakai-main.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=6d16dade8e84d60c1d985eff1413bec5)
そごう・西武の記事ランキング
- 2022-12-21百貨店跡地再生に強みのヨドバシカメラ 図表でわかるビックカメラとの都心争奪戦の行方
- 2021-12-07そごう・西武、法人向けに健康管理アプリを提供開始
- 2022-11-15そごう・西武売却決定でどうなる!?ヨドバシ、フォートレス連合が取り得る4つの打ち手とは
関連記事ランキング
- 2024-06-28家電量販店決算ランキング2024 上位5社すべて減収も…
- 2024-06-29人気アナリストが解説、主要小売7業態決算総括と24 年度の展望
- 2022-12-21百貨店跡地再生に強みのヨドバシカメラ 図表でわかるビックカメラとの都心争奪戦の行方
- 2021-07-08ケーズデンキ、家電特化の「がんばらない経営」がコロナ禍で過去最高益となった必然とは
- 2019-09-19家電量販店売上高ランキング! ヤマダ、エディオン、ヨドバシ…上位10社を見ていくと
- 2022-10-13すべて逆張り!?「感動接客」のノジマが仕掛ける、家電不毛地帯への出店戦略の勝算
- 2023-04-14家電の品揃えを拡大するニトリの深謀 さらなる成長にはエディオンとのコラボがカギに
- 2012-09-15家丸ごと一戸へのソリューションを提供する=ヤマダ電機社長兼COO 一宮忠男
- 2021-04-15家電量販店のエディオンがLINEチラシ導入で閲覧数を大幅にアップできた理由とは
- 2021-04-21ヨドバシカメラが甲府で4月28日開業、山梨県初出店
関連キーワードの記事を探す
家電量販店決算ランキング2024 上位5社すべて減収も...
人気アナリストが解説、主要小売7業態決算総括と24 年度の展望
販売苦戦中の家電量販店、2023年度決算発表前に2022年度決算を振り返り!