ZOZOに勝つ!日本のアパレルが「シーイン」になる唯一の手法とは
盤石の強さを誇るファーストリテイリング、ファッションECを完全に抑え込むZOZO、そしてシーインなど圧倒的低価格で日本市場を攻める“アジア外資”。これら企業の前で、ジリジリと負け戦に入っているのが、いまの多くの日本のアパレル企業だ。この日本のアパレル企業に対し、逆転必勝の戦略を今回はお届けしたい。具体的に本稿では、株式会社ZOZOを想定競合先とし、彼らの脅威とその裏側を記したうえで、逆転戦略を明示する。
アクティブ会員1000万人越えの
ZOZOの脅威から逃れられるか?
すでに日本市場の12%程度を占めているファーストリテイリング(アパレル市場規模を8兆円、ユニクロのシェアを約1兆円と想定)を想定競合先としなかったのには理由がある。最大の理由は、ユニクロ拡大は一般アパレル企業の「負け戦」とは直接的な関係はないということだ。ユニクロが戦っているアパレル市場は、他のアパレルが戦っているアパレル市場と全く同じで、ユニクロが勝っていても、他の競合アパレルがよいものを売れば、他の産業、例えばコスメ産業やアミューズメント産業から市場を奪い、アパレルビジネスの売上は上がる。しかし、ZOZOは違う。説明しよう。
ZOZOの顧客は、全体の会員数が1141万人、アクティブ会員数が1019万人(いずれも23年3月期末時点)と日本人の10人に1人はZOZOでお買い物をしている顧客なのだ。これは、一時期、ZOZOSUITSなど奇抜なツールの開発に加え、前社長の有名女優との交際、宇宙旅行など「前澤劇場」に翻弄されメディアもZOZO一色になったこととも無関係ではないが、それら以上により本質的な要因は、「日本のアパレルがZOZOに自らの顧客を差し出している構造」にある。「プラットフォーム」という言葉が流行だした、まだプラットフォーマー黎明期ともいえる時期から私は、「ZOZOに出店したら、あなたの顧客のクレジットカードや購買履歴はあなたではなく、ZOZOに残ります。これからの時代はデータの量と質が勝敗を決するため、絶対にあなたの優良顧客情報を渡してはいけません」と何度も繰り返し言及してきた。
しかし、残念だが、私の助言は日本企業に届かなかった。例えば、その当時支援していた企業は、私にサプライチェーンを頼み、マーケティングを有名な戦略系コンサルに頼んだ。呆れたのは、その戦略系コンサルの連中は、「ZOZOの顧客とうちの顧客は違う」と、理解不能なロジックを振りかざし、ZOZOをはじめとする外部出店を繰り返し、顧客の60%以上がデッド(登録だけして離脱してしまった顧客)となったのだ。結果、せっかく苦心して成し遂げた黒字化も2年で大赤字に逆戻りしてしまった。
確かに、リアル店舗の売上向上は「出店数 x 店舗あたり売上」である。しかし、それは、店舗が持つ商圏エリアが、物理的に限界があるからだ。簡単にいえば、北海道の大丸でお買い物をする人は、九州の大丸までいかない、東北の百貨店でもいかないだろうということである。しかし、ウエブは違う。ワンクリックで我々はニューヨークのサーバから、シンガポールのサーバに移る。「物理距離」がないのだ。距離には「時間距離」「物理距離」「精神距離」の3つがある。時間距離というのは、AからBへ移る時間を表し、精神距離というのは、その店舗と自分の好みが合うか合わないかを表す。この「3つの距離」が遠いのである。
河合拓のアパレル改造論2024 の新着記事
-
2024/12/17
あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは -
2024/12/10
ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは -
2024/12/03
ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは -
2024/11/26
イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い -
2024/11/19
ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果 -
2024/11/12
アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
この連載の一覧はこちら [51記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ),しまむらの記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2022-04-15鈴木誠社長が語る、しまむらがコロナ禍でも業績好調の理由とは
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2024-09-12海外事業好調のファストリが首位独走!アパレル売上高ランキング2024
関連記事ランキング
- 2024-12-10ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
- 2024-11-26イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い
- 2024-12-03ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2024-12-17あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2023-09-26無印良品の一部となる三菱商事ファッションとユニクロ:Cの成功が意味することとは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
関連キーワードの記事を探す
あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
VTuberビジネスに学ぶ、小売業を高収益化する「レバレッジ」の掛け方
ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ