ZOZOに勝つ!日本のアパレルが「シーイン」になる唯一の手法とは
盤石の強さを誇るファーストリテイリング、ファッションECを完全に抑え込むZOZO、そしてシーインなど圧倒的低価格で日本市場を攻める“アジア外資”。これら企業の前で、ジリジリと負け戦に入っているのが、いまの多くの日本のアパレル企業だ。この日本のアパレル企業に対し、逆転必勝の戦略を今回はお届けしたい。具体的に本稿では、株式会社ZOZOを想定競合先とし、彼らの脅威とその裏側を記したうえで、逆転戦略を明示する。
アクティブ会員1000万人越えの
ZOZOの脅威から逃れられるか?
![ZOZO ロゴ](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2022/10/jpp039825887.jpg)
すでに日本市場の12%程度を占めているファーストリテイリング(アパレル市場規模を8兆円、ユニクロのシェアを約1兆円と想定)を想定競合先としなかったのには理由がある。最大の理由は、ユニクロ拡大は一般アパレル企業の「負け戦」とは直接的な関係はないということだ。ユニクロが戦っているアパレル市場は、他のアパレルが戦っているアパレル市場と全く同じで、ユニクロが勝っていても、他の競合アパレルがよいものを売れば、他の産業、例えばコスメ産業やアミューズメント産業から市場を奪い、アパレルビジネスの売上は上がる。しかし、ZOZOは違う。説明しよう。
ZOZOの顧客は、全体の会員数が1141万人、アクティブ会員数が1019万人(いずれも23年3月期末時点)と日本人の10人に1人はZOZOでお買い物をしている顧客なのだ。これは、一時期、ZOZOSUITSなど奇抜なツールの開発に加え、前社長の有名女優との交際、宇宙旅行など「前澤劇場」に翻弄されメディアもZOZO一色になったこととも無関係ではないが、それら以上により本質的な要因は、「日本のアパレルがZOZOに自らの顧客を差し出している構造」にある。「プラットフォーム」という言葉が流行だした、まだプラットフォーマー黎明期ともいえる時期から私は、「ZOZOに出店したら、あなたの顧客のクレジットカードや購買履歴はあなたではなく、ZOZOに残ります。これからの時代はデータの量と質が勝敗を決するため、絶対にあなたの優良顧客情報を渡してはいけません」と何度も繰り返し言及してきた。
しかし、残念だが、私の助言は日本企業に届かなかった。例えば、その当時支援していた企業は、私にサプライチェーンを頼み、マーケティングを有名な戦略系コンサルに頼んだ。呆れたのは、その戦略系コンサルの連中は、「ZOZOの顧客とうちの顧客は違う」と、理解不能なロジックを振りかざし、ZOZOをはじめとする外部出店を繰り返し、顧客の60%以上がデッド(登録だけして離脱してしまった顧客)となったのだ。結果、せっかく苦心して成し遂げた黒字化も2年で大赤字に逆戻りしてしまった。
確かに、リアル店舗の売上向上は「出店数 x 店舗あたり売上」である。しかし、それは、店舗が持つ商圏エリアが、物理的に限界があるからだ。簡単にいえば、北海道の大丸でお買い物をする人は、九州の大丸までいかない、東北の百貨店でもいかないだろうということである。しかし、ウエブは違う。ワンクリックで我々はニューヨークのサーバから、シンガポールのサーバに移る。「物理距離」がないのだ。距離には「時間距離」「物理距離」「精神距離」の3つがある。時間距離というのは、AからBへ移る時間を表し、精神距離というのは、その店舗と自分の好みが合うか合わないかを表す。この「3つの距離」が遠いのである。
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